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「妻が作るスシは大好物だが…」デンマーク出身なでしこジャパン新監督が来日後食べて感動「本物の寿司」を日本サッカーのDNAに例える理由
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井川洋一Yoichi Igawa
photograph byYuki Suenaga
posted2025/05/03 11:03
なでしこジャパン初の外国籍監督となったニルス・ニールセン。グリーンランドにルーツを持つ指揮官が日本をお気に入りになった理由とは
確かにシティもなでしこジャパンも、中盤に長谷川がいて、ショートパスをベースに攻撃を組み立てていく。共通点は、そのほかにもあるのだろうか。
「似た部分はいくつかありますが、本当の意味での日本女子代表のスタイルは、すべてのポジションに日本人選手がいなければ、実現できません。なぜなら、彼女たちは少女時代から、そのスタイルを教わってきているからです。他のチームが真似をすることはできても、完全に模倣することはできない」
ルーマニア人の妻が作るスシは大好物だが
ひと呼吸おいて、彼は例え話を始めた。
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「私の妻はルーマニア出身のダイバーなのですが、かつてエジプトで暮らしている時、3人の日本人のルームメイトと一緒に住んでいました。そこで日本の食事や文化が大好きになり、寿司を作るようになりました。それは私の大好物です。
ただ、私は昨年末に初めて日本に来た時、日本サッカー協会の会長(宮本恒靖)と本物の寿司をランチで食べた。そこで食べた寿司の味は、格別でした。それまで一度も味わったことがない、最高の寿司でした。つまり、本物の何かを作るには、本物の材料が必要になるのです。
フットボールに置き換えると、それは各国のDNAと言えるでしょう。
私がデンマークU-18女子代表の指導を始めた頃、日本女子代表の監督はミスター・ササキ(日本サッカー協会女子委員長の佐々木則夫氏)でした。(前年に彼の率いたなでしこジャパンがW杯で優勝し)私は彼のチーム作りを参考にしました。でもそれは模倣するわけではなく、彼が日本のDNAを代表チームにうまく取り入れていたので、私はデンマークのDNAを見出し、それに沿ったチームを作っていった。その方針はうまくいき、翌年からデンマーク女子A代表を任され、女子EURO準優勝に繋がったのです」
ノリオ・ササキの助けを借りられるなんて!
既出のインタビューでも、ニールセン監督は日本からのオファーを受けた大きな理由のひとつに、佐々木氏の存在を挙げている。曰く、「ノリオ・ササキは女子フットボール界のレジェンド。そんなアイコンと共に仕事ができる機会は、なかなかない」と。実際に彼と仕事を始めて得た感触は?
「何よりもまず、彼はナイスガイです。そしてユーモアのセンスがある。本当に面白い人なんです。私も楽しい会話や笑うことが大好きだから、本当によかった。ちょっとした問題があるとすれば、言葉の壁くらいで、それも通訳の方に助けてもらっています。

