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「女性の心を完全に理解できると思わないが」ニルス監督流“なでしことの信頼構築”が深い「モモとは英語で。一方でサキ、ミナは…」
posted2025/05/03 11:04
シービリーブスカップで驚愕のロングシュートを叩き込んだ谷川萌々子。彼女を含めたなでしこに、ニールセン監督はどう働きかけている?
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井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Brad Smith/ISI Photos,Getty Images
モモは実に稀有なタレントです
「最高の選手たちと仕事をするのは、楽しくて仕方がないんです。モモ(谷川萌々子)もそのひとり。彼女には、信じられないほどの才能があります。シービリーブスカップでは、負傷から明けたばかりで、どの場面で彼女を起用するか、慎重に判断する必要がありました。結局、2試合目のコロンビア戦だけの出場になりましたが、開始18秒で驚愕のゴールを決めてくれました。実に稀有なタレントです」
日本女子代表のニルス・ニールセン監督は、なでしこジャパンが誇る19歳のセントラルMFについて、そう話した。
谷川は英紙『ガーディアン』が昨年末に発表した世界の女子フットボーラー100選で、85位に選出された超逸材だ。21位に長谷川唯、81位に熊谷紗希、98位に宮澤ひなたも入っているが、10代の選手は100人中たったのふたり。この競技の報道でもっとも信頼できるメディアのひとつが、「2024年にブレイクした日本のスーパースター」と太鼓判を押した理由には、パリ五輪のブラジル戦でチームを逆転勝利に導く鮮烈なミドルシュートがあった。
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パルク・デ・プランスで試合終了間際に放った一撃と同様に、アリゾナで行われたコロンビア戦のロングシュートも凄まじかった。キックオフ直後に中盤でボールを奪うと、少しだけ前に持ち出して迷うことなく左足をひと振り。重そうな弾道は重力に反するように伸びていき、右のトップコーナーを射抜いた。
モモ、サキ…選手一人ひとりに安心してもらう
シービリーブスカップで谷川の出場時間がコロンビア戦の69分間だけに留まったのは、きっと監督が彼女の状態を考慮したことと、テストに一発合格したからだろう。
とはいえ、監督時代のユルゲン・クロップも言ったように、選手は軽傷を抱えているくらいなら、どんな時でもピッチに立ちたいと思うものだ。指揮官としては、時にはそんな気持ちを宥めなくてはならない。円滑にコミュニケーションを取るために、ニールセン監督は何を心掛けているのだろうか。

