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「別次元に行っちゃった…」森保ジャパン期待の20歳高井幸大の“顔”が変わった?「Jリーグでは化け物級」敵記者も嘆く“ポカ激減”進化のワケ
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菊地正典Masanori Kikuchi
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/04/01 17:03
サッカー日本代表・森保一監督から期待を寄せられるDF高井幸大(20歳)。身長192cmはフィールドプレイヤーの中で最長身
「眠すぎるので、質問は3つでお願いします。寝てないっす。マジで寝てない」
じつは多摩川クラシコの3日前、高井はぼんやりした目つきで報道陣の前に立っていた。
前日に北中米W杯アジア最終予選・サウジアラビア戦を戦ったばかりの高井が、選手寮に帰ってきたのは深夜2時。冗談半分の発言ではあったが、起床した朝8時の間までほとんど寝付けなかったという。W杯出場をすでに決めていたとはいえ、最終予選で初のA代表スタメン出場を果たしたのだから、興奮が冷めなかったとしても不思議ではない。
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ただ、筆者はこの時、一抹の不安を抱いていた。前指揮官の鬼木達監督に度々指摘されてきた通り、高井は“代表帰りのプレー”を課題としていたのだ。
2023年のU-20W杯、2024年のパリ五輪と国際大会を経験してきたが、チームに合流するとパフォーマンスが落ちる傾向があった。初めて日本代表に選出された24年9月もそう。アウェイでバーレーンと戦った3日後のサガン鳥栖戦は帰国直後とあってベンチスタートとなったが、22日の名古屋グランパス戦ではハイボールの処理を誤って失点を招くなど、0-2で敗れた一因となってしまった。
だからこそ、多摩川クラシコは高井の現在地を測る大事な一戦になると見ていた。コンディションが優れない中でもピッチで示した堂々たる存在感は、また一つ大きな壁を乗り越えたと言っていい出来だった。
森保監督もホメる“縦パス”の質
“Jリーグでは化け物級”という言葉を借りれば、気になるのは海外組がほとんどを占める日本代表内での評価だろう。高井を抜擢した森保一監督は、サウジアラビア戦での90分をこう評している。
「とても落ち着いていて、攻守ともにコントロールして試合の流れを作る大きな貢献をしてくれたと思っています。引いた相手を崩すために幅を使いながら、数的優位を作りながら前線に配球していく攻撃の起点としても彼の持っている技術を発揮してくれました」
攻撃の起点として見せ場を作ったのは立ち上がりの9分。チーム全体で相手を押し込み、フィールドプレイヤー全員が敵陣に入った状態でボールを受けると、高井は鋭い縦パスを刺した。2人の相手の間を通ったボールを受けた田中碧はさらにスルーパスを送り、前田大然が決定機を迎えた。前田のシュートは右ポストを叩いたが、得点が決まっていれば、高井の縦パスはさらに多くの人に認知されていたはずだ。
また、森保監督は守備機会が少ない中でも相手のキーマンを封じた高井のディフェンスにも一定の信頼を寄せた。
「相手はカウンター狙いで、かつキープレーヤーの1人である(サレム・)アルドサリ選手とマッチアップすることも多い中、しっかりリスク管理のバランスを保ちながら相手の起点を抑えるというところで、非常にいいプレーをしてくれたと思います」


