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「石川祐希の背中が小さく見えた」波乱の大逆転負け…絶対王者ペルージャに何が?「我々は間抜けな猟師だ」イタリア現地記者が見た“異変”
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弓削高志Takashi Yuge
photograph byMichele Benda/AFLO
posted2025/01/29 17:44
コッパ・イタリア準決勝で敗戦したペルージャ。ケガ人が続出する中、奮闘してきた石川祐希だがここにきて疲労の色も見える
コッパの連覇を逃した名将ロレンツェッティは、敗北の怒りと苦しいチーム事情を喉の奥に呑み込んだ。敗軍の将として、試合への準備に不備があったと認めるような発言をしている。
クラブメディアの監督取材に同行したが、そこでは戦術議論はなされなかった。秘密主義の名将は具体的な解決策には言及せず、独特の言い回しで反省の弁とした。
「ほんの10日前まで我々は国内で最も攻撃に秀でたチームではなかったかね? しかし現に今、我々は敗れた。再び立ち上がるために我々全員が汗をかき、自信をつかまねばならん。誰かがコートにぽんと解決策を持ってきてくれるなんて奇跡は起こらんのだ。
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今日の我々は鉄砲の狙いの定まらない間抜けな猟師だったよ。次の目標のことを考える前に、今日の敗戦を戒めとしなければならん」
2014-15シーズン、中央大学からの短期留学生としてイタリアに渡った1年目にモデナへ在籍した石川は、当時の指揮官ロレンツェッティとともにコッパ・イタリアの優勝トロフィーを掲げている。
10年を経た今季の大会で、あらためて自らの手で同タイトルを監督と勝ち取るという思いは強かったのではないか。試合後、ロッカールームの出口で尋ねてみると、今、この瞬間を生きるプロボーラーとしてのプライドのこもった言葉が返ってきた。
「それ(=10年前の記憶)より、ペルージャというチームで去年ずっと勝ち続けて(セリエA前半戦)1位になって(コッパ・イタリア決勝まで)しっかりと勝ち続けたいと思っていた」
試練の時を迎えるペルージャと石川
先ほどまで浴びていた大歓声がウソのように、石川はひっそりとアリーナを後にした。192cmの背中が小さく見えた。
翌日の決勝では、ペルージャを破ったベローナをチヴィタノヴァがフルセットの激闘の末に下し、4季ぶりにタイトルを奪還した。シーズン終盤に向け、ライバルたちは追撃を本格化させるだろう。
ペルージャと石川は試練の時を迎えている。

