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「石川祐希の背中が小さく見えた」波乱の大逆転負け…絶対王者ペルージャに何が?「我々は間抜けな猟師だ」イタリア現地記者が見た“異変”
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弓削高志Takashi Yuge
photograph byMichele Benda/AFLO
posted2025/01/29 17:44
コッパ・イタリア準決勝で敗戦したペルージャ。ケガ人が続出する中、奮闘してきた石川祐希だがここにきて疲労の色も見える
国内外合わせて今季すでに6度のマッチMVPを受賞している石川がペルージャの重要な得点源であることは、セリエAではもはや周知だ。石川を徹底的にサーブで狙い、十分な体勢でスパイクを打たせないことやブロックでのコース潰しは、対戦相手にとってペルージャ攻略の定石と化している。
ペルージャのアンジェロ・ロレンツェッティ監督は調子を狂わされた石川のワンポイント交代や故障上がりのOPワシム・ベンターラの投入などで反撃の糸口を探ろうとしたが、リーグ得点ランキング1位(17節終了時点)のOHノウモリ・ケイタを中心にゲームの主導権を握ったベローナの勢いを止めることはできず。最終セットを前に沸き立つベローナベンチとは対照的に、全員が直立不動で指揮官の指示に聞き入るペルージャのベンチには悲壮感すら漂っていた。
ベローナが強敵だったのは確かだ。高さとパワーに特化した個性派チームが総合力に優るはずのペルージャを圧倒した。
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スタメン6人の平均身長は203.8cmでペルージャより6cm近く高い。会場の展示によればブロック最高到達点が驚異の350cmとされる大砲ケイタがスパイクとサービスエースで計30ポイントの大暴れ。ブロック数も14本を決めたベローナが4本のペルージャを相手に、ネット上を制圧したといっていい。マッチポイントでは崩されたレセプションから石川のセットに合わせたベンターラのライト攻撃がシャットされて、ペルージャの準決勝敗退が決まった。
石川とチームメイトたちは呆然とした表情でコートを後にし、ベンチに佇んだ。まちがいなく現時点での全力を尽くし、その上で敗れた敗北感に叩きのめされた顔をしていた。
ケガ人続出…石川のプレーにも疲労が
昨秋から、選手たちのケガがチームのコンディションをじわじわと蝕んできた。MBセバスティアン・ソレが開幕直前に肘を手術し、冬に入るとMBロベルト・ルッソが左足首故障で欠場。腹筋の違和感で司令塔ジャンネッリも本調子ではなかった。それでも勝ち星を積み重ねてこられたのは、ペルージャの攻撃力がずば抜けて安定していたからだ。
セリエA14節終了時点で首位ペルージャは得点数、サービスエース数、ブロック数いずれのチーム別ランキングでも2位以下を大きく引き離していた。伊スポーツ紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は「突出したエースはいない。だがハイレベルな攻撃ローテーションこそ彼らの最大の武器」と評した。
常勝軍団ペルージャにとって、プロトニツキとカミル・セメニウク、そして新加入の石川の3人をトップコンディションで起用していくターンオーバー体制は、他のライバルたちが持ち得ない、彼らだけのストロングポイントだった。
しかし、プロトニツキ負傷によってそれが崩れ、石川とセメニウクが国内リーグ戦と長時間移動を強いられるCEVチャンピオンズリーグの連戦でフル回転を余儀なくされている。昨季のコッパイタリアMVPでもあったプロトニツキを欠く彼らは“もし自分まで怪我をしたらチームが回らなくなる”と不安を抱えながらプレーしているにちがいない。初黒星を喫したトレンティーノ戦では石川も左脚を攣らせている。
ベローナとの準決勝でも、石川のスパイクは何度もシャットされ、守備でも踏ん張れない場面が度々見られた。連戦で疲労がたまっているのは明らかだ。


