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「このチームには毒が必要なんです」巨人・長嶋茂雄監督が“40歳・落合博満”の獲得に執着したワケ「あの年のジャイアンツは落合なくして語れない」
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鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2025/01/23 17:00
4年ぶりにリーグ制覇し、長嶋茂雄(左)、吉村禎章(右)と鏡抜きをする落合博満
長嶋は13年ぶりの巨人監督復帰が決まった'92年オフから、中日でプレーしていた落合を何とか獲得できないかと思案を巡らせていた。そして'93年オフからフリーエージェント(FA)制度の導入が決まり、一気に熱は燃え上がる。'93年のシーズン中にロッテ時代から落合と交流のあったニッポン放送アナウンサーの深澤弘を通じて、巨人移籍へのアプローチを始めたのだった。
「最初のうちはなかなか落合も首を縦に振らなかったんだよ」
深澤から聞いた話だ。
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「でもシーズン終盤に信子夫人が『あんた長嶋さんがそれだけ熱心に誘ってくれているなら巨人に行きなさい!』って後押ししてくれて、ようやく落合も決心してくれた」
11月7日。落合はテレビ朝日系の「スポーツフロンティア」に生出演してFA権の行使を表明した。
メディアで巨人入りが報じられると、巨人OBを中心に一斉に巻き起こったのが落合不要論だった。'93年シーズンは打率2割8分5厘の17本塁打、65打点の成績に終わり、年齢もこの年の12月で40歳になる。かつての三冠王に対して「もう峠は過ぎた選手」「4億円を超える年俸の価値はない」と獲得反対の声が渦巻いたのである。
「監督、なぜそこまで落合の獲得に執着するのですか?」
騒動の最中に直接、長嶋にこんな質問をしたことがある。
「監督、なぜそこまで落合の獲得に執着するのですか?」
長嶋の答えはこうだった。
「このチームには毒が必要なんです。今の巨人は同好会になっている。だから追い詰められた逆境に弱い。いま我が巨人軍は3年連続で優勝を逃し、逆境のとき、冬の時代です。こういう時に優等生的なものは期待してもダメなんだ。だから落合という毒、個性の塊が必要なんです」
そして長嶋の狙い通りに落合の加入は、巨人という伝統チームに化学反応を起こすことになる。
「落合さんの加入で、確かに巨人は変わったと思います」
こう語るのは当時の主力選手の1人、岡崎郁だった。
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