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「優勝監督インタビューで、落合は号泣していた」本当は“熱い男”だった落合博満…巨人時代にも「長嶋監督との約束を守れなければ末代までの恥」

posted2024/12/30 17:06

 
「優勝監督インタビューで、落合は号泣していた」本当は“熱い男”だった落合博満…巨人時代にも「長嶋監督との約束を守れなければ末代までの恥」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

中日監督時代の落合博満(写真は2010年)。メディアや選手に対する“沈黙”の奥底で、さまざまな思いをめぐらせていた

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横尾弘一

横尾弘一Hirokazu Yokoo

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Hideki Sugiyama

メディアにも、選手にも。普段は多くを語らない。しかし、一度口にした目標は確実に達成してきた。三冠王も、リーグ優勝も。ライバルの能力と自身の状況を冷静に分析・シミュレーションし、目標を現実にしてしまう方法論とは。「Sports Graphic Number」1092号に掲載された「三冠王の言葉学 落合博満『オレ流・有言実行伝説』」を無料で公開します。(全2回の2回目/年齢、肩書などはすべて掲載当時)

「長嶋監督との約束を守れなかったら末代までの恥」

 その後、'93年のオフには、この年から導入されたFA権を行使して巨人と契約。「オレ流」を貫く球界の異端児を獲得することに、巨人OBの大半が反対したという。それでも、再任した長嶋茂雄監督から「若手に君の生き様を見せてほしい」と請われ、あえて茨の道を選ぶのだ。

「優勝させるために来た。長嶋監督との約束を守れなかったら末代までの恥」

 そう公言する裏では「もう自分の成績にこだわるのは終わり。これからは、チームを勝たせるためにプレーする」と語り、グラウンドでもそうした行動が増えていく。

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 '94年の広島との開幕戦では、先発の斎藤雅樹が11対0と大量リードの9回2死から連打され、一、三塁とピンチを招く。すると、落合はタイムを取ってマウンドに向かい、斎藤に「絶対に完封しろ」と伝えた。

「勝ちは見えているんだけど、開幕戦でエースが投げているんだから、勝ち方にもこだわらなきゃいけない。結果的に完封したことで、『この年の巨人はひと味もふた味も違う』という印象を与えられたと思う」

 落合の言葉通り、巨人は開幕ダッシュに成功。落合は、折に触れて「場面に応じて、いかに最善を尽くすか」という考え方をチームに浸透させていく。終盤には中日とデッドヒートとなり、10.8決戦にもつれ込んだが、この試合でも先制弾を放つなど落合は随所で存在感を発揮した。そのプレーや行動から、メディアは「落合効果」を巨人優勝の要因に挙げた。ただ、3回裏の守備で左内転筋を痛めた落合は、西武との日本シリーズに1試合しか出場できなかったものの、巨人は5年ぶりの日本一を勝ち取り、長嶋監督との約束を果たした。

【次ページ】 骨折の完治を前に「5日間で3000球」を打ち込み…

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