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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「いつまで現役やっとんじゃ!とヤジも…」伝説の「10・8決戦」松井秀喜に被弾した中日左腕の今→「ダメだったら潰そうと」転身したわらび餅屋が大人気
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byNumberWeb
posted2025/01/16 11:05
中日の本拠地・バンテリンドーム近くでわらび餅屋を経営する山田喜久夫さん
「死を覚悟した」大病
大病も患った。2019年には慢性腎不全が悪化して緊急入院。
「体調が悪くなって50m歩くにも2、3回休まなければいけなかった。足もパンパンに腫れて革靴が履けないほど。人工透析か、移植かという選択肢だったんですが、僕は透析は絶対に嫌だったのでもう死ぬ、と。3人の子供達を呼んで、『保険金をかけているから、俺が死んだらそれでやっていってくれ』と話をしたこともありましたね」
幸いにも7歳下の妹から腎臓移植を受けられることになり、手術を受けた。
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「妹には本当に感謝です。命を救ってもらいました。半年かけて徐々に体を動かしていって、だいぶ足は弱りましたが動けるようになりました」
手術、療養を経て仕事に復帰。現在はわらび餅を製造・販売する傍らで、軟式の少年野球チームの監督を務めるなど野球指導にも関わっている。
「天狗になるな」心に置く恩師の言葉
「野球に関わることができる喜びを今あらためて感じています。子供達にもよく言うんですよ。『野球をやらせてもらえる、という気持ちを常に持って感謝を大切にしていこう』って」
愛知・東邦高時代には選抜大会で優勝投手となり、鳴物入りで地元の中日に入団した。10年間のプロ生活では、中継投手として活躍する華やかな日々の一方で、歴史的大一番で屈辱の思いも味わった。畑違いのわらび餅屋に転職し、10年余り。今も自ら店頭に立ち続ける日々の中で心に留めているのはこんな言葉だという。
「(東邦高元監督の)阪口(慶三)さんも、星野さんもよく言われていたんです。『天狗になるな。どんな時でも謙虚に』と。色々なことを経験した今もそれは忘れないようにしています」(前編からつづく)
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