- #1
- #2
マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲斐拓也の巨人加入は“背信行為”?「大きな戦力アップになるかは…」敏腕スカウトが疑問視するワケ「“刺せる”岸田のほうがありがたい投手も」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNanae Suzuki
posted2024/12/26 11:09
FAでの巨人移籍が発表されたソフトバンクの甲斐拓也。非常に珍しい正捕手の移籍は巨人にとって吉と出るか
高校3年の秋になってもなかなか進路が決まらず、状況から「プロ」しか適性がないのでは……と考えた関係者が、地元ソフトバンクの九州担当スカウトに「一度見てもらえないか」と頼み込んだ。
「甲斐のことは、3年間ずっと見ていました。今は甲斐バズーカなんて言っていただいていますが、高校時代はそこまで鉄砲肩じゃなかった。その代わり、体の持っているスピード……プレースピードが素晴しかった。確かに小柄(当時168cm、74kg)でしたけど、獲って獲れない選手じゃなかったですね」
ただ、本気で、死ぬ気で野球に打ち込めるのか。その一点に疑問があったという。甲斐捕手と向き合ったのが、当時、九州担当だった福山龍太郎スカウト(現アマチーフスカウト)。以前、こんな振り返り話をしてくださった。
ADVERTISEMENT
「ヒッチする打ち方やったけど、3年間で40本放り込んどった。スローイングのボディバランスも良くて、(二塁送球の)タイムも1.7秒台が出た。プレーに野性味もあるし、こいつやったら賭けてみたい。そう思って、一点だけ確かめに行きました」
当時の担当スカウト「甲斐は本当に変わった」
自分で人生を変えてみろ、その覚悟はあるのか!
君が本気で変わろうとするんなら、オレも勝負する!
「球団に推薦して、指名にこぎ着ける……仮に育成ドラフトだって、自分らスカウトにとっては<勝負>なんです。甲斐は、そこから本当に変わった。人はこんなにも変われるのかっていうぐらい、変わりました。親ごころっていうのも変ですけど、涙が出るほど嬉しいです」
プロ野球の暮れは、「行く人来る人」の季節。
感傷にとらわれていても、あっという間に年が明けると、グラウンドにまた男たちが集まってくる。
春になり、グラウンドに球音が聞こえるようになった頃、どこかの現場で福山さんを見つけて、「甲斐拓也問題」についての本音をたずねてみたいと思っている。
<つづき「有力捕手少なすぎ問題」編を読む>