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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲斐拓也の巨人加入は“背信行為”?「大きな戦力アップになるかは…」敏腕スカウトが疑問視するワケ「“刺せる”岸田のほうがありがたい投手も」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNanae Suzuki
posted2024/12/26 11:09
FAでの巨人移籍が発表されたソフトバンクの甲斐拓也。非常に珍しい正捕手の移籍は巨人にとって吉と出るか
「絶対的存在のレギュラーマスクは、チームを動かないものだ」
そんな思い込みがあったから、驚きと共に軽いショックすら覚えた。
古田敦也(ヤクルト)、伊東勤(西武)、里崎智也(ロッテ)、阿部慎之助(巨人)……かつてのレジェンドマスクたちの多くは、最初に入団したチームで現役生活を全うした。
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FAだのなんだのと、球団を移りやすい制度ができた昨今だが、捕手がチームを動くということはその球団の情報もすべてリュックの中に詰め込んで移籍するわけだ。
それはもしかして、「背信行為」ではないのか。それとも、そんなことは、昭和のナニワ節の感傷にすぎないのか。
「チームのサインは、どこの球団も毎年変えてきますから、そんなに問題ないと思いますが、痛いのは、ピッチャーのクセがわかってしまうことじゃないですかね。セットでの牽制のクセとか、変化球の軌道とか、まっすぐの球質、性格……あと、たとえば○〇投手はフォークを2球続けて投げられないとか」
そういう「ほんとのところ」がわかってしまうのが痛いのでは……と、現役生活豊富なある元スカウトの方が教えてくださった。
「まあ、そうは言っても、長いこと一緒に戦ってきた仲間ですからね。移籍したからって、急に手の平返したように、あれもこれもベラベラしゃべることもないと思いますよ。特に、そのピッチャーの命取りになるようなことはね」
甲斐加入で戦力アップ?「そこまで単純じゃない」
そのへんは「ご同業の仁義」ということなのだろうが、野球界はやはり人間くさい世界のようである。
「甲斐が加入したから大きな戦力アップになるかっていわれると、プロ野球のピッチャーっていうのも、また野球自体も、そこまで単純じゃないと思いますよ」
現役が長かった人というのは、こうした話がスラッと出てくる。
「甲斐の持っている持ち点が100点だとして、甲斐が入ったから<プラス100点>にはならない。相性っていうんですか……合う、合わないって、あるじゃないですか、なんでも。プロのピッチャーって、主張、強いですよ。生活かかっているんですから」