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「野球やめます」清原正吾の引退決断ウラ側…恩師への報告は“車の中”だった「方向性が決まりました」密着記者が見たドラフト指名漏れ“その後”
text by
柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph byKYODO
posted2024/12/14 11:00
清原正吾の野球引退。そのウラ側を恩師と親友が明かした
「お互いの進路について話すタイミングは何度かあったんですけど、彼は大学野球をやりきることが両親への恩返しであり、区切りとして考えていた。もちろん、プロ野球を目指したからこそプロ志望届を出したと思うんですけど、それを出すかどうかという決断からして、彼自身の中でも揺れていた。軽々しくあいつの気持ちを口にすることはできないですけど、もし指名がなければ、野球をやめるつもりなんだろうなとは思っていました。指名されなかったあとに話すと、『ここからはいろんな可能性を探りながら考えていきたい』と。寂しさはありますけど、あいつは自分の決めたことはやり通してきた人間。応援したい」
「引退の報告」は車の中で…
指名があれば野球を続ける。指名がなければきっぱりと野球界から離れる。正吾はそう心に決めてプロ志望届を提出していたのだ。
それでも監督の堀井は、慶早戦の結果によって、正吾が心変わりするのを密かに期待していた。堀井が正吾からの電話連絡を受けたのは11月22日の朝。「方向性が決まりました」という正吾に対して、堀井は「直接会って話をしよう」と伝えた。明治神宮球場で用事のあった堀井は、それを終えてから球場にほど近い「カフェ・ベローチェ」の前で正吾をピックアップし、自家用車の助手席に乗せた。
堀井 これからどうするんだ?
正吾 野球はやめて、違う道に進もうと思います。自分で声明文も作りました。野球部を通して発表してもらおうと思ってます。(オファーのあった9球団に対し)お断りの連絡を入れていただけますか。
堀井 わかった。明後日の日曜日(11月24日)に私の方から連絡を入れておくようにするから。
正吾 よろしくお願いします。
たったそれだけの短い会話だった。22歳の決断に対し、堀井は翻意を促すことなく、カフェから1kmも離れていない表参道で正吾を降ろした。
堀井は言う。
「彼の葛藤がものすごくわかっていたからこそ、多くの言葉を交わす必要もなかったんですね。ドラフトから1カ月近くの時間があった。親御さんも含めていろんな方に相談もしたでしょう。私個人としては野球を続けて欲しいという気持ちはありましたが、彼の言葉を聞いて、受け入れました。受け入れたというのはおかしいのかな。彼の意思を尊重することにしました。すべての学生に対して言えることですが、野球を終わってからの人生の方が長い。どんな道に進むにしても頑張って欲しい。ただそれだけです」
なぜ正吾は野球から離れ、新たな道を歩むことを決断したのか——。幼なじみと恩師が、正吾の素顔と、その決断の理由について言及した。
〈つづく〉