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「クセに注目しすぎて」超速・五十幡亮汰はなぜプレミア12米国戦で盗塁死した? 本人&亀井善行コーチが明かす「サニブラウンに勝った足だけでなく…」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2024/11/22 17:03
プレミア12、アメリカ代表戦7回に代走で登場した五十幡亮汰が喫した盗塁死には、快足の「課題」と「無限の可能性」が詰まっていた
この日の五十幡は、失敗だけでは終わらなかった。6−1とリードを広げて迎えた8回1死では、7番手の左腕C・ビューから死球を受けて出塁。続く坂倉将吾(広島)の打席の2球目に盗塁成功し、さらに捕手の悪送球の隙をついて三塁進塁。桑原将志(DeNA)のセンター前ヒットで7点目のホームを踏んだ。
「あそこで行ってくれたことの方が良かった」
井端監督は試合後五十幡に、盗塁失敗の場面についてこんな言葉を伝えている。
「あそこで行けないより、行ってくれたことの方が良かった。その後にもしっかりスタートを切れたことも良かった」
その成長を誰より期待すればこそかけた温かい言葉だった。
亀井コーチは、試合後に五十幡とじっくりと話をした。その中で、たとえに出したのが巨人での現役時代、同じ外野手として鎬を削った鈴木尚広(現・巨人二軍外野守備兼走塁コーチ)だ。
「代走のスペシャリスト」のDNA
「尚広さんは現役時代、相手ピッチャーの癖や、何か一つの部分だけに注目するのではなく、全体を見てその場の雰囲気を感じながらスタートを切っていたそうです。それを彼にも伝えて、空気を感じながらできるといいよねという話をしました」
鈴木コーチは20年の現役生活で228盗塁。通算成功率は.829と抜群の高さを誇り、勝負を賭けた場面で登場し、重圧の中で必ず盗塁を成功させた。単純な足の速さだけではなく、走塁技術やメンタルの強さを全て備えた「代走のスペシャリスト」の DNAを五十幡にも受け継いで欲しかったのだろう。
「スタートを切る根拠というものがあって、尚広さんは常にそこに自信を持っていました。勇気と慎重さのさじ加減というのはすごく難しいと思うんですけど、数少ない球の中で分析して、このタイミングだという根拠を持っていければ、五十幡ももっと自信を持っていけるはず。何しろお金を稼げる足を持った選手ですから。ジャパンにとっても大事な戦力だし、武器だと思っています」
この日の試合で五十幡が残した記録は「盗塁1、盗塁死1」。しかし、チャンスを潰してしまった「盗塁死1」の失敗にこそ、さらなる進化への糧があった。五十幡は誓う。
「あと3試合なので、しっかり反省するところは反省して次に繋げたい。国際大会に関して、難しさはすごくあるけれど、自分のこれからに活かしていけたらと思っています」
世界を驚かせるスピードスターにはまだ、未知の伸び代がある。