甲子園の風BACK NUMBER
「監督は練習で自慢話をしている」「そんなこと僕らに言われても」からのリスタート…“かつての強豪”東洋大姫路が17年ぶり近畿大会復活Vのウラ話
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2024/11/18 06:00
17年ぶりとなる秋の近畿大会優勝を決めた東洋大姫路の岡田龍生監督。履正社時代は全国制覇も経験した名伯楽だが、就任直後は戸惑うことも多かったという
岡田監督は「僕からはああせい、こうせいとは言うてないんですよ」と振り返る。
「履正社の時もね、選手らに言うてたのは、これだけ奥川君の前で打席に立っているお前たちが一番(奥川投手の特徴を)分かっているやろうと。奥川君はあの世代でナンバーワンのピッチャーでしたし、奥川君を打てたら日本一になれる。ならば、どうすればいいのか。それぞれが考えてやれよとは言ったんです」
岡田監督が東洋大姫路の監督に就任することを聞き、東洋大姫路へ進学したエースの阪下は、岡田監督の指導についてこんなことを言っていた。
「岡田先生はヒントを言っても答えは絶対に言ってくれないんです。だから自分たちで考えないといけない。(岡田監督の言葉を受け)最初は正直、自分たちもどうすればいいのか分からなかったんですけれど、今は少しずつ考えられるようになりました」
「“全国優勝”を選手の前で口にしている」ワケは…?
17年ぶりの秋の近畿大会の優勝は、間違いなく彼らの、そして東洋大姫路としての復活への矜持となる。
「いやー、それでもこれから勝ち続けられるようにならんとね」
苦笑いを浮かべながら指揮官は言う。もちろん、ようやく手にした近畿大会のタイトルだけでは満足していない。履正社時代は常に意識してきた全国の頂点へ気持ちをみなぎらせる。
「ここ(東洋大姫路)に来てね、“全国優勝”という言葉を選手の前でよく口にしているんですよ。履正社の時は言わなくても自然と意識できたけれど、ここはそうじゃない。日本一になるためにどうするとか、常に言うてます。そこからどう変われるかです」
脱“古豪”への第一歩となるのか。まずは来春センバツに向けての前哨戦となる明治神宮大会が待つ。ブルー主体からアイボリー地のユニホームに身をまとい、母校の“第二次黄金期”を睨んでタクトを握る名将の目が、さらに鋭く光る。