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なぜソフトバンクは「今年1球も投げていない」投手を指名した? 育成7位・津嘉山憲志郎のドラフト会議ウラ話「こういうこともあるんだな、と…」
posted2024/11/14 11:00
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
(L)Nanae Suzuki、(R)Fumi Sawai
時計の針はとっくに夜8時を過ぎていた。
自分の名前を呼ばれたのはいつ頃だっただろうか。何時何分までは記憶していないが、名前が響いた瞬間、一緒に見守っていたチームメイトの歓声と、ようやく名前が呼ばれたと安堵したことは、はっきりと覚えている。
「あの時は本当にホッとしました。指名されて、まずは良かったというのが一番です。みんなでずっと待っていて、(名前が呼ばれた瞬間に)みんなが拍手してくれて」
「ソフトバンク 育成7位 津嘉山憲志郎 投手 神戸国際大附高校」
テレビ画面に映し出されたモニターには、確かに自分の名前があった。
ライバルよりも早く…高1夏に早くも高校野球デビュー
最速148キロの速球を武器とする本格派右腕として関西圏の高校野球界では早くから津嘉山の名前は知れ渡っていた。
その名がさらに広くとどろくようになったのは22年夏。神戸国際大付と社が対戦した兵庫大会の決勝だった。
2-2の同点だった6回から3番手投手としてマウンドに立ち、延長14回までもつれた激戦でロングリリーフ。打者22人を連続でアウトに打ち取るなど、7イニングを無安打に抑える快投を見せた。ただ、当時を振り返ってもらうと意外なことを口にした。
「投げていて楽しかったですし、あの試合は点が取られる気がしなかったんです。ただ……あの時、高校野球でタイブレークがあるのを知らなかったんです。あの試合は確か13回からだったんですけど、12回まで投げ終わって初めて知って。自分の準備不足だったのもあります」
現在は延長戦に入る10回から起用されているタイブレークが、当時は13回から採用されるルールだった。結局、14回表に3点を失い、津嘉山は負け投手に。それでも今秋のドラフト会議でソフトバンクから1位指名を受けた村上泰斗(神戸弘陵)や阪神から2位指名された今朝丸裕喜(報徳学園)よりも早く高校野球の公式戦デビューを果たしたのだった。
出身は沖縄県沖縄市。4人の兄が高校、もしくは大学から県外に出ていたため、自分も早くから沖縄を離れることは自然な流れだと思っていた。中学生の時に神戸国際大付の施設を見学し「ここで野球をやりたい」と兵庫県内屈指の実力校の門をくぐったが、最初は関西特有の言葉のイントネーションに何度も戸惑った。
「喋り方というか……関西弁は早口なのもあるので最初は聞き取り方が難しかったです。でも、入学したときに3年生に沖縄の方がいたので心強かったです」