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京大合格20人以上…偏差値70“奈良No.1公立進学校”野球部が秋大会で大躍進のナゼ「練習は週休2日」「ノックは10分だけ」快挙の秘密は“清掃活動”?
posted2024/10/08 17:17
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
Fumi Sawai
秋季奈良県大会。準決勝での郡山高校との“進学校対決”を制し、熱戦後、34年ぶりに近畿大会出場を決めた吉村貴至監督の表情が緩んだ。
「34年かかりましたけれど、やっと(近畿大会に)連れて行ってもらえる。この子たちがよく頑張ってくれました」
前回の近畿大会出場は、90年秋。吉村監督が当時奈良高校3年生だった秋以来だ。
「県No.1公立進学校」が決勝進出のワケは?
試合は共に先発したエースが3回まで1人も走者を出さない“完全投球”を繰り広げるも、4回に死球を足掛かりに奈良が先制。直後の4回裏に郡山が追いつくも、5回に奈良が2点を勝ち越し、8回に4点を加え一気に突き放し7-3で決勝に駒を進めた。
「この秋は、実は一度もリードされないまま決勝まで来られたんです。(準決勝で)初めて追いつかれたのかな。序盤、中盤まで粘って、最後突き放すパターンで勝つことができました。何より今のチームは夏の大会の経験者が多く残ったことも大きかったです。打順だと……(夏の県大会経験者は)上位の5人です。ポジションが替わった子もいますけれど、本当によくやってくれています」
夏の奈良大会では準々決勝で敗れたが、前評判の高かった奈良大付に1-2と善戦した。野手は多く残ったとはいえ、主戦投手が全員3年生だったため「投手に関してはどこまでやれるのかな、というのはありました」と指揮官は言う。
そんな不安を取り除いてくれたのがエース右腕の神山詞だった。
昨年夏までは遊撃手。だが、スローイングの良さを見極められ秋以降は投手の練習も本格的に始めた。現2年生の学年に投手がいなかったというチーム事情もあったが、今夏は3番手投手としてベンチ入りしていた。
「夏の(3回戦)桜井戦で2番手で投げた3年生の投手が足をつってしまったんです。本来は3番手の神山を投げさせるのですが、まだ神山には信用がなかったので先発したエースの3年生をマウンドに戻したんです。『ここはエースに投げさせるから、お前は秋に頑張ってくれ』と神山に言いました。たぶん本人は悔しい思いはしているはずです」