酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
トライアウト舞台裏…「パパー!」号泣する息子や新潟ユニの陽岱鋼、“5年前の戦力外投手”は最速151キロ「今回で終わりと決まったわけでは」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2024/11/15 17:03
トライアウト後、取材を受ける陽岱鋼。現行方式で最後の合同トライアウトの風景はどんなものだったか
鈴木将平には右前打を打たれたが、菅野剛士を154km/hの速球で空振りに切って取った。
「いい調整ができました。シーズン中よりもいい状態かな、というところまで仕上げることができました。やってきたことをしっかりやるだけという気持ちでした。最後はフォークを安打されましたが、いい球が投げられたんじゃないかなと思います」
最速161km/hの右腕は健在だった。
陽岱鋼が語った「日本への感謝」
昼休みになって、陽岱鋼がプレスルームに現れた。途中でユニフォームをオレンジからブルーに変えている。
「トライアウトは誰でも出られるものではないので、出場できることを感謝して出ました。4打席で安打はなかったけど、最初の当たりはいい当たりだったので良かった。でも、安打じゃなかったのは残念ですね。(37歳、最年長だが)ベンチの中は若い選手たちは緊張していたけど、いい空気でもありました。返事を待つ身ですが、いい結果もあると思って、子どもたちを学校に送り迎えしながら待ちたいと思います」
2013年オフ、台湾で行われたアジアシリーズの試合中、陽岱鋼夫妻が貴賓室に姿を現すと、球場のファンが一斉に立ち上がり、試合が中断した。陽岱鋼は台湾では、大谷翔平のようなスターなのだが、なぜ、日本にこだわるのか?
「僕は高校の時に、日本の福岡に来ました。育ててもらったと思っていますので、日本の国、NPBには特別の思いがあります。感謝しています」
スター選手のオーラが漂っており、別格だなと思った。
大阪桐蔭で春夏連覇のエース、5年前の戦力外も
そのほかにも名の知れた選手や、多様なバックグラウンドを持つ人物が参加していた。例えば根尾昂、藤原恭大らとともに甲子園を沸かせた大阪桐蔭のエース、日本ハムの柿木蓮もトライアウトのマウンドにいた。菊田拡和を三振、三好大倫を左飛と冴えた。
「準備をしっかりして臨めたので、結果につながったと思います。悔いが残らないようにという気持ちでした。(甲子園などとは違う舞台だが)僕はもともとかなりの緊張しいなので、緊張しないように投げようと思いました」
一方、村川凪は徳島インディゴソックスから育成でDeNA入り。もともと「足」が売りで、周東のようになるかと期待された。今春、DOCK(DeNAの横須賀の二軍施設)で話を聞いたときは「もうすぐ上がって来るよ」とのことだったが――トライアウトでは盗塁も見せた。
「キャッチャーの力量と、投手の牽制やクイックがプロは違うなと思いました。でも走塁は通用すると思いました。(上がってこられなかったのは)成功率を見られたのかなと。今日はいいところを見せられたかと思います」
最後にマウンドに上がった元ロッテの島孝明は、一軍では登板経験はない。しかも退団したのは2019年だ。しかし151km/hを記録した。