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日本シリーズ「フジテレビの取材パス没収」は妥当だったのか?“ワールドシリーズ放映問題”とは分けて考えるべき…NPBに問う“報道の自由”とは
posted2024/11/15 17:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
日本野球機構(NPB)の井原敦事務局長が11月11日、都内で開催された実行委員会後に取材に応じ、日本シリーズでフジテレビの取材証を没収した問題について経緯の説明を行った。
すでに様々なメディアで取り上げられているが、まずは問題の事実関係を整理する。
フジテレビとNPBの問題の経緯
フジテレビが日本シリーズの地上波テレビ試合中継の裏でロサンゼルスドジャースの大谷翔平選手が出場していたMLBのワールドシリーズの録画ダイジェストを放送。これに怒ったNPBがフジテレビに発行されていた日本シリーズの取材証を没収して、いわゆる「出入り禁止処分」としたものだった。一方、水面下ではフジテレビ系列のテレビ西日本(TNC)制作だったペイペイドーム福岡での第3戦の中継権の剥奪の動きもあったようだが、そちらは時間的に難しく断念。そのためTNCの取材証は継続有効となり、その後も日本シリーズ取材は可能だったという。
11日の取材対応で井原事務局長は今回のフジテレビのワールドシリーズの裏放送についてこう説明している。(この件に関する井原事務局長の発言はデイリースポーツの報道を要約、以下同)
「日本シリーズというのはプロ野球にとって最大の価値があるもの。日本シリーズは1番上のものとして、ペナントレースも成立している。日本シリーズの地上波完全中継はテレビ各局、スポンサーさん(現在はSMBC)、12球団すべてのプロ野球関係者、野球機構を含めて協力体制のもとで行われている。その協力体制が損なわれる、危うくするような状況であった」
その上で取材証の没収は「信頼関係が著しく毀損されたという認識。(パスの没収はNPBの)判断だった。急なことだったので事務局判断です」としている。
今回の問題では2つのことを分けて考えなければならない。
1つはフジテレビが日本シリーズの裏でワールドシリーズの録画放送を行ったことの是非。そしてもう1つはそれに対してNPBが取材証の没収という報道の大原則を損ないかねない処分を行ったことが妥当だったのかということだ。
フジテレビのワールドシリーズの録画放送に関しては、井原事務局長も認めるように、これはフジ側の編成権の問題で、原則的にはNPBがとやかく口を挟む問題ではない。ただその一方でフジテレビも系列局制作とはいえ、第3戦の中継を予定しており、中継当日はワールドシリーズの録画放送は時間をずらしての放送だった。
取材証の剥奪は妥当だったのか?
そういう意味では日本シリーズの地上波中継に対して、球界全体の事情に無配慮で身勝手、センスのない判断だったと言わざるを得ないものだった。