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青学大「11人抜かれの4年生」の執念、駒大「秘密兵器ルーキー」の躍動…本戦よりもアツい? テレビには映らない“もうひとつの出雲駅伝”のリアル
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph bySatoshi Wada
posted2024/10/18 17:17
出雲駅伝のレース後、日が暮れてから行われる記録会。選考から漏れた選手にとっては今後の駅伝メンバー入りを占う勝負レースとなる
それだけではない。駒澤大はアンカー対決で敗れており、その悔しさを味わわされた直後でもある。
「篠原(倖太朗)さんの涙を見て、強い駒澤のイメージを崩しちゃいけないと思い、金谷(紘大)さんと絶対にワンツーを取る、というプランでした」
正選手として走れずとも、いわば“7区”の選手としてのプライドがある。ライバル校の選手に負けるわけにはいかなかった。
実際に、谷中が競り合ったのも、駅伝と同じく、青山学院大や國學院大の選手たちだった。
残り2周を切って、青山学院大の4年生、白石光星が仕掛けると、谷中は冷静に対処し、逆に引き離しにかかった。最後は約4秒差をつけて13分49秒71の自己ベストで1着でフィニッシュした。
「勝ち切れ」という指揮官の要望に応えただけでなく、一気に自己記録を10秒以上も更新し、自身初の13分台をマークした。
「トップを取れたので、そこは合格点をあげられる。ちょうど1年ぶりのトラックレースで自己ベストを出せたのは大きな収穫。夏合宿をしっかりできたのが自信につながったかなと思います。
今回の出雲駅伝はギリギリのところで外れてしまって悔しい思いをしたので、全日本はしっかり走りたいっていう気持ちが強いです」
谷中にとって、夏の成果をようやく披露する機会になっただけでなく、全日本への思いをいっそう強くしたレースになった。
監督は「間違いなく全日本は(谷中を)使います」
藤田監督も「よくやった」と、走り終えた谷中を称えていた。
「負けてもただでは起きないのが駒澤なので、『チームが負けたなかで、お前たちがどういうレースをするかが大事だ』っていう話をして送り出しました。谷中は非常に強かったですね。次の全日本に向けて“駒澤は絶対に負けないんだ”っていうのをアピールできました。これはもう間違いなく全日本は(谷中を)使います」
指揮官もこう太鼓判を押す。谷中のアピールは成功したというわけだ。本番までアクシデントがなければ、おそらく伊勢路を駆ける谷中が見られるだろう。