核心にシュートを!BACK NUMBER
きっかけは「両親の死」…40歳になった“元日本代表Bリーガー”が3部チームでの再挑戦を選んだワケ「最後に納得いく何かをつかみたいんです」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by(L)Nanae Suzuki、(R)香川ファイブアローズ公式Xより引用
posted2024/10/06 11:02
紆余曲折を経て今季、B3の香川ファイブアローズでプレーする岡田優介。決断のウラには複雑な感情もあった「両親の死」も影響したという
岡田は基本的には単身赴任で、週末の試合の後に千葉にある自宅に帰る生活を送ることになる。B3には首都圏のチームが多いため、アウェーゲームの後、自宅に帰るときの負担があまりない。週末の試合のあと、月曜日はほとんどのチームがそうであるように練習が休みだから、月曜の夕方ころまでは家族と過ごすことができる。
香川県で朔玖君に合うような支援を受けられる環境を探すのは、千葉県にいるときと比べて簡単ではない。人口が大きく違うのだから仕方のないことだ。
妻をはじめ、周りの人に負担がかかるのは百も承知だ。それでもなお、選手としての最期を納得のいく形で締めくくろうとしている。
果たして、それはワガママなのだろうか。バスケ選手としての最期は、その後の父親としての人生に必ず影響を与える。何より、岡田の生き様を2人の子どもたちは――どこまで言語化して理解できるかは別として――見て、何かを感じる。
バスケ選手としての新たな使命を手にした今、父親としての使命についてはこう考える。
「朔玖に関しては、多分、言葉が完璧に出るようにはならないと思うんです。ただ、一応指示は伝わり、何かをやることはできる。就労支援型施設や障害者を雇用するような施設は現在もありますが、そういうものを自分で作るとか、そういう支援をできる会社を作るとか……。
娘には、いつか言うつもりです。『朔玖のことはお父さんたちが死ぬまでに、きちんと環境を整えておくから。しんどかったら、面倒は見なくていい。自由に生きるのはオマエの権利なんだから』と。やはり、父親としてはそのための体制を整えることが使命ですね」
日本代表、選手会長…40歳になった岡田が目指すのは?
3部リーグにあたるB3は、華々しく報じられるB1よりも1週間早く、9月27日にひっそり開幕を迎えた。香川は東京八王子ビートレインズとのアウェーでの連戦から新しいシーズンをスタートさせた。
八王子の体育館には岡田の新しいグッズを身につけたファンが多くかけつけた。何より、岡田自身が圧巻のプレーを見せた。初戦では、放ったシュート全てを決め、12得点。岡田の最大の魅力はシュートの上手さだが、その活躍には同じバスケ選手も舌を巻く。強豪ジェッツ時代の同僚で、38歳になる「Mr.ジェッツ」こと西村文男は「キレッキレ。」とXで絶賛したほどだ。
10月5日、今度はホームでの開幕戦を迎えた。
これまではほとんど縁のなかった香川県。そこで生きる人たちに必要とされ、プロバスケ選手としてそれに応える仕事が岡田を待っている。