「すごく上振れすれば2ウェイ契約だったりとか、本契約だとかっていうところにいけるとは思うんですけど、正直今のロースターは2ウェイも含めて埋まっている状態。現実的に見れば今年1年間はGリーグでプレーすることが、NBAを目指す上での今ある現状の中での選択肢なんじゃないかなと思っています」

　その言葉通り、河村がグリズリーズのキャンプからは外れても必要以上のショックを受けるべきではない。日本語で“解雇”と訳した際の響きは重いが、すべては想定内。自分の力を信じる背番号17にとって、それもまた新たなスタートに過ぎないのだから。

「いつだって2ウェイ契約なり本契約を目指しながら、Gリーグでプレーするってことは変わりません。その気持ちを常に持っている選手にチャンスが訪れる。Gリーグでプレーしながら、そこで満足せずに、自分に正しく向き合いながら、アピールできればいいなと思っています」

　今、河村がやるべきことは、小柄な身体を存分にフル回転させ、自身の得点力とプレーメイキングがアメリカでも通用すると見せること。ディフェンスではモラントが振り返っていた通り、フルコートでも当たれる機動力と耐久力を示すこと。それと同時に英語力もさらに向上させ、新しい環境でのコミュニケーション、生活にさらに慣れていければ世界は広がる。それらをやり続けていけば、世界最高のステージであるNBAに少しずつでも確実に近づいていけるはずである。

「常にここでプレーできるってことを証明し続ける毎日を送らないといけない。自分のいる今の現在地をしっかりと把握してプレーすることが大事になってくるんじゃないかと思います」

2022年3月、NumberWebのインタビューで将来のビジョンを語っていた河村勇輝　©︎Tomosuke Imai

　そう言って静かに笑った河村にとって、大変なのも、本当に充実するのもまだまだこれから。自身の立ち位置と未来予想図をしっかりと視野に入れた成熟したPGの行く手に、明るい未来がうっすらと見えている。

　アメリカが舞台となった長く楽しい戦いは、まだ始まったばかりである。