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「これで終わりなんだっけ…」男子バレー“まさかの逆転負け”の真相…敏腕コーチが映像を見直して確信「“イタリア戦”は完璧なスタートだった」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKoji Aoki/AFLO SPORT
posted2024/09/27 11:05
スタッフ全員が勝利を信じて疑わなかったパリ五輪・準々決勝イタリア戦
ベスト4進出まで、あと1セット。ここでも伊藤の勘は冴え渡った。
イタリアは2セットを奪われるとローテーションを動かすことが多い。前年のネーションズリーグでも日本が2セットを先取した後、ローテーションを回したデータを思い出していた。伊藤は「またイタリアは回してくるはず」と考え、時間ギリギリまで熟考し、日本はローテーションを3つ回した。すると、またも策がハマった。
「これやばい、来た、と。絶対いけるぞ、と心から思っていました」
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伊藤は「この時ばかりは昂ぶった」と回顧する。
イタリアは打開策を見出そうと、マッチアップを変えてローテーションを3つ回したが、日本が先手を打ったことで結果的に第1、2セットと同じマッチアップに。イタリアの狙いを外して静かに喜ぶ伊藤に、行武は「さすがだ」と羨望の眼差しを向ける。まさに理想通りの展開で、「うまくいきすぎているんじゃないか」とすら思いながらも、準々決勝という大きな壁を越えようとしている現実に、胸の高鳴りを抑えられずにいた。
第3セット終盤、石川がプッシュで決め、24対21。スタンドで見守っていたマネージャーの坂本將眞らも勝利を確信し、周りにいるスタッフたちと握手を交わした。
だが、ここから悪夢のような展開が続く。
「目標はメダルから金メダルに変わった。厳しい道のりだとはわかっていたけれど、このチーム、選手だったら、最終的に獲ると信じていた。どんな相手でも勝つだろうと思いながら見ていたので、信じられなかった。これで終わりなんだっけ、って。頭が、追いついていませんでした」(坂本マネージャー)
勝利目前の握手から1時間後、飛び上がって勝利の喜びを噛みしめていたのは、イタリアだった。
〈第3回に続く〉