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「これで終わりなんだっけ…」男子バレー“まさかの逆転負け”の真相…敏腕コーチが映像を見直して確信「“イタリア戦”は完璧なスタートだった」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKoji Aoki/AFLO SPORT
posted2024/09/27 11:05
スタッフ全員が勝利を信じて疑わなかったパリ五輪・準々決勝イタリア戦
スタートのローテーションを決めるうえで、ブランに求められたのは「(2023年の)ネーションズリーグ3位決定戦で勝った時と同じマッチアップにしたい」ということ。伊藤も完全に同意し、これまでの対戦や他国との対戦時の傾向からイタリアのスタートローテーションを6分の1に絞った。
イタリアの攻撃に対するブロックの布陣、サーブで狙う選手の位置、さまざまな要素をふまえると、最も望ましいのは相手がオポジットのサーブから始まるS4、対して日本が石川祐希のサーブから始まるS6で臨むこと。スタメン表を見ると、イタリアのサーバーはオポジットのユーリ・ロマーノ。まさに伊藤の狙い通りだった。
表情こそ変えなかったが、伊藤は小さな声で「よしっ」とつぶやいた。その声は、隣にいた行武にも届いていた。
「1セット目のローテーションをどうするか。これはすごく重要なので、伊藤さんとものすごく話し合って決めます。最終的にはブランさんに確認しますが、ネーションズリーグのメダルマッチなど、僕らに任せてもらうことが増えてきて、(パリ五輪の)イタリア戦でもしっかりハマった。出だしは完璧でした」
相手のサーブがどんなサーブで、どのコースに打たれることが多いか。傾向を出すのはもちろん、それぞれがどう対処すればいいのかまで選手に伝える。自チームのサーブを打つ時にはどこへ打てば相手が崩れやすいかを示す。試合前のミーティングで伝えた通り、第1、第2セットは順調に試合が進んだ。
エース石川祐希の復調
加えて、予選ラウンドで調子が上がらずにいた石川が復調した。第1セットからサーブが走り、セッター関田誠大が絶妙なタイミングで託したバックアタックも決まった。これまでの試合で“勝ちパターン”はいくつもあったが、まさに待ち望んだ形のバレーボールを展開した。
石川のコンディションを懸念していた村島は、スタンドで胸をなでおろした。
「大会前から石川の状態、フィジカル的に見ても上がっていないのはわかっていました。そこから(コンディションを)上げていくには練習で少し負荷をかけなければならないのですが、昨年のOQT前にも石川がケガをしたことがあったので、状態を上げることを考えながらもまずは疲労を抜かなければならない。状態が上がってこないことは本人が一番わかっていましたから、『大丈夫、次は上がってくるから』と話をしながら五輪を迎えていました。そして実際にアメリカ戦の頃からフィジカル的にはかなり上がってきた。石川は、最後に必ずやってくれる、という期待もありました」