酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
青木宣親42歳引退で村上宗隆が涙したのも納得…「通算打率.313」「ファンにサインを書き続け」“成績も人柄も21世紀最高”のアベレージヒッター
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2024/09/14 11:02
42歳での引退を決断した青木宣親。日米での野球人生はきっと、未来のスワローズにとっても大きな財産となる
外野飛球をキャッチすると「アラボーイ!(attaboy!いいぞ!)」と声を上げた。背中の「23」が躍動していた。「青木は若返った!」そう思ったものだ。
MLBからNPBに復帰した打者の多くは、MLB移籍前よりも成績が落ちるのが常だ。全盛期の数年間をアメリカで過ごして「下り坂」で帰ってくるからだ。またアメリカと日本のプレー環境のギャップにも戸惑う。
しかし青木は、ここから「第2の全盛期」ともいうべき活躍を見せる。
“21世紀最高のアベレージヒッター”を示す通算打率
青木がMLBに移籍した時点でのNPBでの打数は3900。18年に復帰した1年目に4000打数に到達し、NPBが公表している「歴代通算打率」に名前が載った。
〈2018年オフ時点でのNPB通算打率5傑〉
青木宣親 .329(4395打1446安)
リー .320(4934打1579安)
若松勉 .31918(6808打2173安)
張本勲 .31915(9666打3085安)
ブーマー .317(4451打1413安)
通算打率は1987年以降、ロッテで活躍したレロン・リーが長くトップにいたが、青木が約30年ぶりに1位になった。現時点では青木は.313(6230打1949安)で6位になっているが、21世紀以降では最高のアベレージヒッターなのである。
復帰後、打率3割を2回記録。40歳からはレギュラーを外れたが、代打の切り札としてしぶとい活躍をした。NPB通算では1949安打。2000本まであと51本だったが、日米通算では2723安打。十分な実績だといえよう。
〈日米通算も含めた安打数10傑〉
イチロー 4367(日1278米3089)
張本勲 3085
野村克也 2901
王貞治 2786
青木宣親 2723(日1949米774)
松井稼頭央 2705(日2090米615)
松井秀喜 2643(日1390米1253)
門田博光 2566
衣笠祥雄 2543
福本豊 2543
この顔ぶれのうち、青木とイチロー、松井稼頭央を除く7人が殿堂入りしている。それを考えれば青木は殿堂入りの資格があるといえよう。
気さくな笑顔でファンにサイン…人柄も素晴らしい
青木は春季キャンプや試合前に、ファンの求めに応じてサインをしていた。ファンの列が長くなっても気さくな笑顔を浮かべてサインを書き続けた。人柄も素晴らしいのだ。
ヤクルトは2021、22年とリーグ優勝を果たして以降、成績が低迷している。引退会見で涙を流した村上宗隆、長岡秀樹ら青木と自主トレをともにした若手打者の活躍が目立つものの、チームは立て直しモードだ。
青木宣親の日米での豊かな経験が、役に立つのではないだろうか。