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「めちゃめちゃネガティブになる人間でもないですから」遠藤航(31歳)が明かすリバプールの生存競争…転機となった“印象に残る2試合”とは
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byRyu Voelkel
posted2024/09/15 17:02
リバプールで2シーズン目を迎えた遠藤航(31歳)。競争の激しい名門クラブでのサバイバルについて語った
「あまり自分を他人と比べるタイプではないんですけど、試合に出ている選手の特徴は何なのか、自分に足りないものは何か、逆に他にはない自分の良いところは何か、みたいなところは日々意識しながらプレーしています。そのうえで、自分の特徴をいかにピッチ上で出せるか。それが結果的にチームに貢献することになると思うので」
このスタンスを、昨季の移籍後も貫いた。
「まずはリバプールのサッカー、クロップのサッカーにしっかり慣れること。その中で、どうしたら自分の良さを出せるか、そのために何が必要なのかを常に考えながらやっていました。特別に何かを大きく変えたつもりはないですけど、かなりアグレッシブなサッカーだったので、守備でも、アンカーとして通常より高めのポジション取りは意識しましたね。出場機会が増えるにつれて周りも自分のことを理解するし、僕も周りの選手の特徴がわかってくる。少しずつ試合に慣れて、だんだんと出続けるようになったことが結果的には大事だった」
遠藤が挙げる「転機となった2試合」
当人の耳にも届いていた「カップ戦要員」という外野の声を一掃する転機として、遠藤は昨季半ばの2試合を挙げた。
一つは、第14節フルアム戦(4-3)。1点を追う展開だった終盤の投入に、ホームの観衆が沸いたわけではなかった。だが、すぐさま自らのシュートでCKを奪い、4分後には同点の右足ミドルをゴール右上隅に決めると、アンフィールドは揺れた。さらに1分後、トレント・アレクサンダーアーノルドの逆転ゴールが生まれる流れは、遠藤がもたらしたと言える。
「自分は守備的な選手ですけど、ゴールという形で、ああいう劇的な勝ち方に貢献できた。しかも、途中から出て。周りの信頼を得る意味では大事な試合だったと思う」
もう一つの第18節アーセナル戦(1-1)は、一般的なボランチのイメージよりも軽く数mは高い位置で果敢に守っていた。アタッキングサードの入り口で、相手プレーメイカーのマルティン・ウーデゴールからボールを奪ったタックルは完璧。データの咀嚼にも長けた遠藤にすれば、シミュレーション通りだったに違いない。
「試合に出続け始めて一番のビッグゲームだったので、引分けでしたけど、自分の良さを出しながらいいプレーをしたというのは、ターニングポイントというか、印象に残っています」
筆者は一連のプレーに、遠藤が以前よりも攻守のバランスを意識するようになった印象を抱いていた。
<後編に続く>