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「ここが限界なんじゃないか」冨安健洋がアーセナルで感じた“分厚い壁”…チームメイトへの劣等感「普通に見て、俺よりあいつの方がいいなと」
posted2024/07/25 11:01
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
Hideki Sugiyama
【初出:発売中のNumber1101号[挫折地点を語る]冨安健洋「アーセナルの壁は分厚かった」】
キャリアで感じた「壁」について冨安健洋はどう語るのか。
口をついて出たのは、エミレーツ・スタジアムのスタンドから自らのチーム、アーセナルを眺めていた時間のことだった。
「怪我もあって外からアーセナルのサッカーを見る機会が増えてから、逆に『こんなすごいことやってんだ......』と。外から見てる分、そのサッカーのレベルの高さをより感じてしまって。これが俺にできるのか という、疑心暗鬼みたいなものが生まれたことがあったんです」
プレミアリーグ1年目、’21-'22シーズンの終盤のことだ。本来はその芝の上をチームメイトとともに走っているはずだった。しかし負傷による離脱もあり、外からチームを眺める時間は増えた。怪我から戻ったタイミングでも自身が納得できるような高いパフォーマンスは見せられず、「悪循環に陥った」こともあった。
「これまでもキャリアにおいては壁というか挫折もありましたけど、そこまで落ち込むことなく、『次がある』とうまく切り替えて進むことができていました。でもアーセナルでは壁の分厚さ、挫折の深さが違う。 クラブの規模も違いますし、その分見てくれてる人も多い。チームメイトのレベルと、監督から求められるレベルの高さも全く違うので」
欧州へと戦いの場を移してから、その時々の壁には当たってきた。シント=トロ イデンでは最初の半年間でピッチに立ったのはわずか1分。負傷時の移籍で復帰後も出場機会は少なく、監督にこう言われたこともある。
「壁当てを一から始めろ、と。インサイドパスから。練習前や練習後に、ずっとひとりで壁当てをしてましたね。その時もしんどかったのはしんどかったんですけど、自分のできることをやるしかないと思ってやってました。あとから見ればその時期に筋トレもして、体重も増やして、戦える体をつくることができた。あの時間が今の僕をつくってくれているのは間違いないので、それを挫折とは捉えてないんです」
「ここが限界なんじゃないか」自信を失った日々の中で
ベルギーとイタリアでもがき、選手として成熟してきた。そしてたどり着いたイングランドで目にしたのは、これまでとは全く違う高い壁だった。