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「なんか祐希の様子おかしくない?」リベロ山本智大が察した石川祐希の異変…勝利目前だったイタリア戦の分岐点「もし戻れるなら…あそこですね」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byReuters/AFLO
posted2024/09/12 11:02
日本代表の生命線である「守備」で貢献したリベロ山本智大(右)。メダルに届かなかったパリ五輪で悔やむ、あるシーンとは?
予選ラウンドで、山本は石川の異変を感じ取っていた。
「(第3戦の)アメリカ戦の日の朝の練習で、全然足に力が入っていない感じがしたんです。サーブレシーブをしている時も足が動かなくて、前のほうのボールが全然ダメで。これ大丈夫かな?と思っていたら、試合が始まっても体にキレがない感じでした。いつもと違いましたね。
もちろんプレッシャーもあるでしょうし、キャプテンという責任もあると思うんですけど、それ以前に体が、ちょっと違うように見えた。深津(旭弘・東京グレートベアーズ)さんも気づいていて、『なんか祐希の様子おかしくない?』って言ったら、『お前よく気づいたね。たぶん俺らしか気づいてないと思うよ』って」
怪我をしているのではないかと心配もしたが、直接石川に声をかけることはしなかった。
「なんて言っていいかわかんなくて……。『体大丈夫?』って言うのも違うし、『どう?』って聞くのもなんか、気に障るなと思ったので。状態が上がってくるのを待つしかなかったですね。彼なら上げてきてくれるだろうと思っていたので。僕も人の心配をしてる場合じゃない、自分のやるべきことをしっかりやろうと思っていました」
山本が拾い、石川が決める
イタリア戦では、石川のサーブを見て「いける」と復調を確信した。
「サーブが走っている時の彼はいいので。普段通りの石川だなと。『やっとか』と思いましたね(笑)」
日本の生命線である守備が機能し、エース石川が本来の姿を取り戻した。ついにハマった日本は、山本を軸に粘って作ったチャンスを、石川中心に得点につなげていく。
2セットを連取し、第3セット終盤。イタリアのオポジット、ユーリ・ロマーノのスパイクを山本がディグし、そのボールを石川がツーで巧みにプッシュして相手コートにねじ込み、24-21とマッチポイントを握った。アップゾーンにいた選手も、スタッフも、ベンチを飛び出しガッツポーズ。会場の興奮は最高潮に達した。