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「甲子園で投げたくないんか。野球辞めろ」誤解された阪神のエース井川慶が明かすホンネ「野村監督の教えで…」と高3時の「井川、大したことねえな」 

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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photograph byJIJI PRESS

posted2024/09/16 12:04

「甲子園で投げたくないんか。野球辞めろ」誤解された阪神のエース井川慶が明かすホンネ「野村監督の教えで…」と高3時の「井川、大したことねえな」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

阪神のエースとして活躍した井川慶。“誤解されたエース”が20年目にして告白した事実とは

 水戸商高のエースだった3年夏の茨城大会決勝は腰痛のためにまともに投げられず、甲子園を逃した。敗戦後、観客のなにげない会話が耳に入った。

「井川って、大したことねえな」

 そのひとことはプロになってからも、ずっと心に残ってきた。その観客には、たった一度の投球だけで「大したことがない投手」とレッテルを貼られてしまったのだ。井川は観客に対してではなく、そう映ってしまった自分を許せなかった。だから、仲間とのビールかけを断ってまで、マウンドに立つ準備を優先した。

20勝、200イニング。投げることで生き方を…

 翌16日は甲子園での広島戦をあざやかな9回1失点完投勝利。17勝目を挙げ、その後、シーズン最終戦で20勝に乗せ、イニング数も200イニングを超えた。もしも、ビールかけに参加していれば、目先の一勝を挙げて、その先に繋がる20勝に辿り着いたかどうか、さだかではない。ただただ投げることで生き方を表現する。それが井川慶の実像だった。

 あれから21年。セ・リーグでは井川のあと、20勝を挙げた投手はだれもいない。

〈つづく〉

#2に続く
「自分はずっと補助席で」“ヤンキースで叩かれた左腕”井川慶が味わった過酷マイナーとメジャー格差「ホテルでの名前はスタンハンセン、と」

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