甲子園の風BACK NUMBER
甲子園スカウトの熱視線と懸念…“ドラフト候補エース4人”に飛ばないバット「評価に影響ないが、スケールの大きい打者が育ちにくいのでは」
text by
間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/08/30 17:02
東海大相模の藤田琉生に関東一の坂井遼。プロ野球スカウトが高評価した投手とともに、低反発バットへの率直な印象も聞いた
「大型左腕はプロで大成しないという声もありますが、身長198センチの左投手は、それだけで他の選手にはない武器になります。直球に角度がありますし、落差の大きいナックルカーブもおもしろいですね。二段モーションにしてから体重移動がスムーズになって、球に力が伝わってきました。まだまだ進化の途中で可能性を秘めているところも魅力です」
藤田は自分でも認識しているが、下半身の強化や体力面に課題がある。だが、スカウトはこのようにも語っている。
「高校生を即戦力としてドラフトで指名するケースは、ほとんどありません。この数カ月で藤田投手は急速に成長しているので、どこまでの選手になるのか楽しみです。どこの球団も超一流に育てたいと考えますし、他球団に行ってほしくないとも思っているはずです」
総合力タイプの広陵・高尾への評価は…
素材型の藤田に対して、完成度の高さが高く評価されているのが広陵・高尾響投手だった。
今大会は初戦の熊本工業戦で9回6安打1失点の完投。しかし、続く東海大相模戦は2番手でマウンドに上がり、1回2/3を7安打5失点と精彩を欠いた。随所にセンスの良さを感じさせたが、スカウトの評価を上げるには至らなかった。
「投球フォームに躍動感がなく、センバツの時ほど打者を圧倒する力を感じませんでした。ただ、どの球種でもストライクが取れますし、要所でのコントロールやマウンド度胸など投手としての総合力は高いです。体が大きくないところも含めて、球団によって評価が割れる投手だと思います」
151キロ右腕、関東一の坂井の長所と課題とは
その他に、スカウトが気になった投手として名前を挙げたのが、関東一・坂井遼投手。坂井は今夏の甲子園で計5試合に登板。決勝の京都国際戦に2番手で登板して2点を失ったが、自責点は1点もなく防御率0.00で大会を終えた。
坂井の特長は直球。準々決勝の東海大相模戦では自己最速の151キロを計測している。スカウトは、こう評する。
「指にかかった時の直球は伸びも強さもあります。変化球を含めてコントロールには課題がありますが、ストライクゾーンで勝負できる直球は目を引きました。スライダーの切れも良かったですね。現時点での評価はドラフト上位とは言えませんが、将来どんな投手になるのか見てみたいと感じさせるタイプです」
将来性や総合力を評価した投手たちの一方で、気になるのは打者についての言及である。