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「実はチェコじゃなかった」女子やり投げ金・北口榛花(26歳)原点の国外遠征…高校時代から強かった“海外志向”きっかけは「北欧の投擲王国」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2024/08/16 17:00
日本女子投擲界に初の金メダルをもたらした北口榛花。チェコでの武者修行が有名だが、実はその原点は別の国に…?
ただ、北口は当初はチェコへの遠征を希望していたという。それは、高校の恩師の松橋昌巳氏が、その当時から「北口の投げ方はチェコが合うのではないか」と話していたからだった。また、北口自身が世界記録保持者のシュポタコバに憧れを抱いていたことも理由の1つだった。
結局、ツテがなかったことと他の選手も合同の合宿だったこともあって、その時には実現しなかったが、高校時代から北口はチェコに興味を示していた。
後にチェコを拠点とすることになったのも、フィンランドにきっかけがあった。
高校卒業後、北口は2009年のベルリン世界選手権銅メダリストの村上幸史氏がコーチを務めていた日大に進学した。しかし、現役選手でもあった村上氏が日大を退職することになり、やり投の専任コーチが不在になり北口は環境とコーチを求めた。
フィンランドでの講習会→チェコ人コーチとの出会い
そんな折、大学3年生のときにやり投の知識を深めるために、フィンランドで開催されたやり投の講習会に参加した。その最終日の懇親会で出会ったのが、現在のコーチのセケラック氏だった。
ここでようやく念願叶い、チェコとのつながりができたというわけだ。
当初は名刺をくれた別のチェコ人コーチに指導をお願いするメールを送ったが、それは叶わず。その後にセケラック氏とインスタグラムのダイレクトメッセージでやりとりをすることになり、ついにチェコ合宿が実現した。それが2019年のことだった。
最初は1カ月間の滞在だったが、その後に1年の大半をチェコで過ごしトレーニングを積むようになった。
ただ、憧れだけでチェコを拠点に決めたわけではない。
北口は2018年にはドイツで合宿を行ったこともあり、やり投の強豪国3カ国での体験があった上で、チェコに渡ることを決めた。北口の行動力にも驚かされるが、自分を客観視できていたからこそ、こういった決断をくだすことができたのだろう。