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やり投げ大国チェコでも大人気! 笑顔の金メダリスト北口榛花が世界を魅了するワケ「チェコの選手ってことでいいよね」SNSで国籍変更を願う声も
posted2024/08/14 19:11
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
Ryosuke Menju/JMPA
1投目。
軽やかな助走から力強くやりを放つ。
パリの青空に美しい弧を描き、65mの白いラインを越えた場所に落下した。
65m80。
投げた瞬間いったと言う手応えもあったのか。北口榛花は記録を見るとガッツポーズをした。
さらなる記録更新を目指した2投、3投目は「ちょっと記録を狙いすぎて、前に出過ぎてしまうような感じだったので、右足にしっかり乗ることと左足をしっかり使い切ることを意識した。両足で踏んで投げる意識で、それができたらもっと飛ぶと思いましたが、あまり(飛びません)でしたね」と笑いながら答えた。
北口の2投目は62m39、3投目はファール、4投目61m68、5投目64m73、最終スローはファールと記録を伸ばすことはできなかったが、1投目が多くの選手の攻め方、メンタルを少なからず刺激したようだ。
3投目に63m93を投げ、銀メダルに輝いた南アフリカのファンダイクは「ほかの選手の投擲を見たり、記録を気にすると自分のペースを崩してしまうので見ないようにしていた。でもハルカが1投目にビッグスローをしたので、攻めの投擲をすることを心がけた」と教えてくれた。
高速トラックも北口の助走を大いに助けた。
今大会のトラックは東京五輪やブダペスト世界陸上と比べてさらに反発が高く、しっかり踏み込むタイプの選手は助走が速すぎて体が前のめりになったり、足があわず腕だけで投げる選手も多く出た。
「(反発をもらえるので)走りやすく、私にとってはありがたい」と北口は予選後に話していたが、トラックにうまく合わせられる能力も彼女を後押しした。
メダル確定後、北口は選手たちと健闘を讃えあった。特に3位に入ったチェコのオグロドニコワとは互いに涙の抱擁となった。
「チェコで練習しているので、チェコ選手と一緒に表彰台に上がれるのは感慨深いものがあります。彼女とはジュニアの頃から一緒に戦ってきていますし」
チェコでも北口の金メダルは大きな話題に
やり投げ大国のチェコでも北口の金メダルはTVなどで報道され、SNSでも大いに注目を集めた。