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「巴投げを警戒すると…」「戦うのが難しい」柔道・角田夏実に“投げられた選手たち”が語ってきた恐ろしさ…じつは阿部詩が“3連敗した過去”も
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2024/08/10 11:05
2018年の全日本選抜体重別選手権にて、阿部詩から巴投げで一本を取る角田夏実
本人の思い「私には巴投げしかない」
角田の巴投げの多彩さは群を抜く。両足を相手の体にあててあげる、奥襟をつかんで投げる……相手の出方に応じてかけることができる。相手の対策の上を常にいく。そこに「分かっていても止められない」と言われる理由がある。進化を続けたのも、角田の巴投げが特別な技であり脅威であることを知るライバルとの切磋琢磨あればこそだ。
角田が伸びてきた頃、日本の理想とする柔道と異なるスタイルからか、日本代表の強化側の評価は決して高いとは言えなかった。
「私には巴投げしか武器がないとみんなに思われています。それを打破しようとした時期もありました」
技の幅を広げようと、立ち技、足技を志向した。その末に1つの結論に達した。
「結局、他の技では投げられず、すると今度は巴投げもかからなくなるという負の連鎖に陥ってしまいました。私には巴投げしかないんですけど、でも、誰にも負けない武器を持っているということが、私の強みだと思っています」
角田自身の覚悟もまた、巴投げを極められた理由だった。