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「巴投げを警戒すると…」「戦うのが難しい」柔道・角田夏実に“投げられた選手たち”が語ってきた恐ろしさ…じつは阿部詩が“3連敗した過去”も 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2024/08/10 11:05

「巴投げを警戒すると…」「戦うのが難しい」柔道・角田夏実に“投げられた選手たち”が語ってきた恐ろしさ…じつは阿部詩が“3連敗した過去”も<Number Web> photograph by Getty Images

2018年の全日本選抜体重別選手権にて、阿部詩から巴投げで一本を取る角田夏実

阿部詩は角田に“じつは3連敗”していた過去

 阿部にとっては、角田が大きな壁として存在した。成長とともに海外勢には圧倒的な強さを誇った阿部だったが、角田には初対戦から3戦連続で敗れた。

 2016年12月のグランドスラム東京の決勝では巴投げをかけられ、投げられるのは防いだものの、畳に寝る角田に下から腕ひしぎ十字固めを決められた。

 2018年4月の全日本選抜体重別選手権、準決勝では巴投げで一本をとられた。

「思い切って自分から技を出したら勝てると思っていたんですけど……。どこか『嫌だな』という気持ちがあったために、この結果になったんだと思います。苦手意識はありますけど、ここを越えないと……」

 のちに、角田についてこう話している。

「ほかのどの選手にも感じたことがない何かがあります。技をかけにいくんですけど、簡単にかからないし、いつのまにか相手の戦い方にはまっているというか、戦うのが難しい選手です」

 角田の培った巴投げと寝技、関節技というスタイルへの感嘆がそこにあった。

ライバルに敗れると「悔しいです」と涙

 ただ、角田が自身のスタイルを高いレベルまで磨き上げた理由も、ライバルたちの存在にあった。

 志々目は2016年と2018年に角田に敗れているが、2017年の世界選手権決勝では角田を破り優勝している。

「この大会で角田選手に勝つことでアピールできると思いました。うれしいです」

 一方の角田は、怪我を抱えて満足に練習できない中での大会という状況にあったが、「悔しいです」と涙を流した。

 角田に3連敗していた阿部が初めての、そして唯一の勝ち星をあげたのは2018年11月のグランドスラム大阪決勝。巴投げを防ぎつつ積極的な柔道をみせ、指導3で反則勝ちをおさめた。

「4回負けたら話にならないので」と過去の映像を観て徹底的に対策を練ったことが実った。このときも角田は悔しさを隠さなかった。

【次ページ】 本人の思い「私には巴投げしかない」

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