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「あの一発でこんなに…」なでしこ谷川萌々子の“五輪30m弾”だけでない衝撃…熊谷紗希が「相手にモモコはいないから大丈夫!」声かけした日
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byTakuya Kaneko/JMPA
posted2024/08/13 06:00
パリ五輪で一躍、知名度を上げた谷川萌々子。なでしこジャパンの未来を担う超新星には“逸話”がすでに数々ある
「自分が将来なでしこジャパンでセットプレーのキッカーになろうと思った時に、まずは今キッカーを務めている選手の近くにいるのが一番の学びになると思ったんです」
その姿勢が実った瞬間が、コスタリカ戦を前にした練習でのこと。大会が始まって以降、試合前日はセットプレーの確認を行うことが通例となっていたが、谷川は豪快な直接フリーキックを蹴り込んだのだ。
本番の相手に、モモコはいないから大丈夫!
キャプテンの熊谷は、冗談交じりに仲間たちにこう声をかけた。
「本番の相手に、モモコはいないから大丈夫!」
熊谷の声かけも、あながちジョークとも言えないほどのキックを見せるほど、谷川は自信を高めた(なおチームもコスタリカ相手に2−0で勝利している)。さらにはバイエルン移籍から期限付きで所属しているスウェーデンのローゼンゴードで7戦連続ゴールを決めるなど、成果を残してパリ五輪代表を掴んだ。そして魔法のような、あのロングシュートが生まれたのだった。
しかし、谷川はパリ五輪の総括について問われると、決して満足げな表情ではなかった。
「短い時間帯だけで考えると、すごく手応えはあったんですけど……」
出場時間で言えば、ブラジル戦の終盤、続くナイジェリア戦での後半アディショナルタイムのみで、わずか10数分。移動を伴う中2日での過酷な環境でコンディション調整に苦心した。
唯さんや風花さんのような運動量を身につけないと
実際、谷川は帰国後にこう尊敬する先輩たちを引き合いに出した。
「スペインのような相手にも走り切る(長谷川)唯さんや(長野)風花さんのような運動量を自分も身に付けないといけないです」
タフさの必要性を痛感したのだ。
実際、谷川が名前を挙げた長谷川――今回の五輪で攻守にタクトを振るった――も、10代から世界の舞台で戦った経験をもとに、このように語っている。