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「あの一発でこんなに…」なでしこ谷川萌々子の“五輪30m弾”だけでない衝撃…熊谷紗希が「相手にモモコはいないから大丈夫!」声かけした日
posted2024/08/13 06:00
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Takuya Kaneko/JMPA
ああいう一発で、こんなにも変わるんだ
7月28日。谷川萌々子のスマートフォンには、数多くのメッセージが並んだ。
100件はあっただろうか。その件数の多さこそが、日本での反響を知った瞬間だった。
「ああいう一発で、こんなにも変わるんだっていう風に……自分は思いました」
今大会のなでしこジャパンを振り返る中で、一番のハイライトを挙げるなら――グループステージ第2戦ブラジル戦の大逆転劇であることは、多くの人が認めるところだろう。
前半をスコアレスで折り返したものの、56分にブラジルに先制を許し、同点に追いつけないまま時間が過ぎていった。スペインとの初戦に1−2で敗れており、もし連敗となれば――そんな苦境に立たされた。そんなチームに新たな風を吹き込んだのは19歳の谷川だった。
「ホントに、楽しみな気持ちでいっぱいでした」
80分にピッチに入ると、88分に鋭いドリブルで相手のハンドを誘ってPKを獲得。これをキャプテンの熊谷紗希が沈めて、アディショナルタイムに同点とした。
衝撃の30m弾と…「もう少し落ち着いたら?」
そして90+6分、世界に衝撃を与えるゴールが生まれた。
敵陣中央、ゴールまで40m弱の位置で相手のパスミスに即座に反応した谷川は迷うことなく右足を振り抜く。相手GKの頭上から降ってくるような軌道のボールはそのままゴールへと吸い込まれた。
〈実に素晴らしい――日本の試合終盤の決勝点〉
谷川のゴールはイギリスの公共放送『BBC』がこの日のベストゴールに選出し、対戦国であるブラジル人記者からも「魔法のようだ」とも称されるほど、衝撃のオリンピックデビュー。挨拶代わりとしては余りある、鮮烈な一撃だった。
ゴールを決めた本人も、試合直後のフラッシュインタビューでは高揚感を抑えきれなかった。いつもの口調よりも高いトーンで言葉を紡いでいったわけだが……。