「準決勝で、フランスのマキシム・ポティ選手相手に5-8と落としチームとして逆転されかけて、気を落としかけました。でも、雄大くんに『やってることあってるよ。すごい良かったよ』と声をかけてもらって、安心できて次の出番に臨むことができた。今度は自分の番だと思って、声をかけました」

　仲間の声援を受けた永野は1点のリードをさらに広げ、100点満点の5-0で相手を完封して帰ってくる。バトンを受け継いだ20歳のアンカーは難なく相手を仕留め、目標を成し遂げてみせた。

男子フルーレ団体の金メダルメンバー。左から永野雄大、敷根崇裕、松山恭助、飯村一輝　©Naoya Sanuki/JMPA

「朝起きた瞬間、枕元に金メダルがあって…」

　太田雄貴が去った後、日本の男子フルーレを長年牽引してきた松山に、金メダル獲得後の記者会見で飯村の存在について聞くとこう答えた。

「彼が隣にいないと思って話すんですけど……」

　耳を塞ぐジェスチャーをする飯村。記者たちから笑い声が漏れる。

「まあとてつもなく素晴らしい選手で、素晴らしい才能とメンタルを持っている、20歳ながら頼もしいチームの一員です。決勝戦の直前にチームミーティングをして、一輝をアンカーにするという話をコーチから提案されたときも全く怖さや心配はありませんでした。もちろん一輝がイタリアとの相性が良かったこともあるんですけど、素晴らしい優勝へのストーリーだなというふうに考えていましたね」

©Naoya Sanuki/JMPA

　金メダル獲得後、ボランティアスタッフからサインや写真を求められ、テレビ局の女子アナから質問攻めにあっていたフェンシング界の新たなスター。

「朝起きた瞬間、枕元に金メダルがあって『本当にあるわ』って。それが朝のいい思い出です」

　3年前の夏、高校の体育館で目指した目標は現実となった。今後はどんなストーリーを見せてくれるのか。