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「石川祐希の表情が少し気になる…」柳田将洋がそう語る理由は? 男子バレーに必要なキャプテンの爆発「ただ、ここからギアを上げるはず」
text by
柳田将洋Masahiro Yanagida
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2024/08/04 06:03
柳田将洋は石川祐希の現状を慮ったが、「プレー自体はそこまで悪くない」と期待を寄せる
とはいえ、繰り返すようですが、石川選手はまだまだここから。一段も二段もギアを上げていくことができる選手です。そして彼が乗れば、相乗効果で他の選手も生きるし、チームにもいい風を吹かせてくれる。自分のコンディションに関してはキャプテンでもある石川選手自身が一番わかっているはずです。
ここから始まる決勝トーナメントは、目の前の1試合に向けてどれだけフォーカスできるかが重要です。いろいろなストレスもあると思いますが、むしろそれも全部忘れて、まずは準々決勝に全力でフォーカスする。それさえできれば、今までやってきたこと、持っているものは間違いないことを知っています。
準々決勝の相手はイタリアに決まりましたが、どんなチームと当たっても「勝てる」と思わせる力が今の日本代表にはある。そして、そう思わせるのはまぎれもなく、石川選手がいるから。彼の良さを出せば何も心配いらないし、きっと出してくる。僕はそう思っています。
東京五輪でも阻まれた準々決勝の壁
振り返れば、前回の東京五輪ではこの準々決勝で敗れました。大事なのは「このチームを叩いて絶対に勝つ」という気持ちを持って試合に入ること。結局、気持ちの話かよ、と思われるかもしれませんが、男子も女子も、絶対に負けられない試合では「やってやるぞ」という強さを前面に出してくる。女子代表が予選ラウンドで戦ったブラジルもまさにそうでした。
何度も言うように、今の日本代表ならば、どのチームが相手でも自分たちのスタイルがハマれば勝ち星は見えてきます。アメリカ戦でも、2セットを先取されてから3セット目は別の戦い方をして、「1セットを獲る」という最低限のミッションを達成した。どんなビハインド、どんな状況でも立て直せる。それだけの準備をしてきたチームです。
日本代表への期待値が高かったことで「ドイツに負けた」「石川選手が交代した」ということが目立っていますが、ここまでの試合のことは一度忘れるべき。ここからは「改善」よりも「対策」に重きを置きたい。この段階で「もっとこうやって打て」と言われても、この短期間で改善なんてできるはずがないし、する必要もない。「相手がこう来るからこうしよう」という対策のほうがとても大事です。
それぞれが自分の力を出すための準備と、チームとしての準備をしっかりしてコートに立ってくれたら、きっと結果もついてくる。だからこそ、僕らは力を発揮してほしいとポジティブに応援するだけ。悔いなくすべて出し切ることを願っています。
(構成:田中夕子)
柳田将洋(やなぎだ・まさひろ)
1992年7月6日生まれ、東京都出身。186cm、アウトサイドヒッター。東洋高校3年時に春高バレー制覇。慶應義塾大学在学中の2013年に全日本メンバー登録。サントリーサンバーズで活躍し、2017年にプロ転向。ドイツとポーランドでプレーし、2020年にサントリー復帰。ジェイテクトSTINGSを経て、現在は東京グレートベアーズに所属。元日本代表キャプテン