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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「打てない打てないって騒ぐけど」西武・渡辺久信監督代行が吐露…「簡単ではない」GM兼任ゆえのジレンマと、無責任な声へのいら立ち
text by
中島大輔Daisuke Nakajima
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/04 17:01
選手、監督、GMとしても常に勝者だった渡辺監督代行はいま、未体験の領域で苦闘する
昔も今も、西武がとりわけ力を注ぐのは「育成」だ。特に近年は「育成のライオンズ」を標榜し、若手への思考トレーニング(※球団では「獅考トレーニング」と呼ぶ)、コーチの育成、スプリントコーチの配置など球界では新しい取り組みに力を入れている。つまり、組織の力で勝とうとしているのだ。
だが、すぐに結果につながる取り組みではない。渡辺GMもそうわかった上で進めている。
「サッカーやラグビーなど日本のどのスポーツもやっていることで、それで成功を収めている。野球界だけ今までなかった。選手の成長スピードを上げるためには、コーチも成長しないといけない。コーチが学ぶことをやめたら、コーチをやめたほうがいい。でも、すぐに結果に出るかというと、時間がかかりますよね。うまくはまったコーチと選手がいたら、個人的にはすぐに結果が出るかもしれないけど」
「なんとか、みんなに前を向かせたいよね」
一定の時間をかけた取り組みを進めつつ、グラウンドでは今、できることに注力するしかない。それこそ、GM職にありながら監督代行に就任した渡辺久信に課せられた使命だ。
「自分の仕事としたら、やっぱり勝つことは当然ですけど、負けていて気持ちがふさぎ込んでいる状況でなんとかみんなに前を向かせる。ほとんどの選手が今年で終わる野球人生ではないし、来年以降もプロとしてやっていくわけだから。後から思えば、あのときは辛かったけど当時の経験があったから……という思いになってほしい。結果は相手があることだから、勝ったり負けたりはあるかもしれないけど、チームが戦える軌道に乗せていきたい」
おそらくライオンズ再建には一定の時間がかかるだろう。その中で今、グラウンドに立つ選手たちは何を目指して戦っていくのか。
GMと監督代行を兼ねるトップのメッセージは、現場で戦う者たちに最も響いているはずだ。
<前編から続く>