松坂大輔「怪物秘録」BACK NUMBER
松坂大輔「野球の神様からの試練」(連載49)
posted2024/08/06 09:00
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Kiichi Matsumoto
ホークスと3年契約を結びながら1年目は登板無し。期待に応えられない現状に松坂は苦しんでいた。そして日本復帰2年目の終盤、ついにマウンドに上がる。
透明人間になりたい――この、たった一行の悲痛な叫びにどれほどの想いが込められていたのかを考えると今も切なくなる。ホークスに入団して2年目の2016年、松坂大輔が何の脈絡もなく携帯電話に送ってきたメッセージ。頻繁にやり取りをしていたわけでもないのに、突然、舞い込んだ松坂からのSOSに仰天した。
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そうでしたね(苦笑)。あれ、何だったかな。べつに追い詰められたわけでもなかったと思いますけど、ただ、純粋にそう思って送りたくなったのかな。そのへんのコンビニへも行きづらかったし、誰にも気づかれず外をゆっくり歩きたいと思ったんでしょうね。あのとき、透明人間と書いたら「ピンク・レディーか」と突っ込まれましたが、じつは世代的にそれがよくわかんなくて、僕にとっての透明人間は『ドラゴンボール』(鳥山明)でした。(主人公の悟空の仲間の)ヤムチャが戦う透明人間のスケさん。透明で相手が見えないからヤムチャが苦戦するんですよ。そのときに(親友の)クリリンが機転を利かせて(ヒロインの)ブルマのおっぱいを(師匠の)亀仙人に見せたら、興奮して吹き出した亀仙人の鼻血がかかって、真っ赤になった透明人間が見えるようになっちゃう。で、ヤムチャが勝つんです。僕にとって透明人間はそのイメージでした(笑)。