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大阪桐蔭「気になる今年の強さ」ライバル履正社に“衝撃のコールド勝ち”、「190cm怪物」森陽樹の登場…現地記者が聞いた“西谷浩一、取材最後のひと言” 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byNanae Suzuki

posted2024/07/30 11:00

大阪桐蔭「気になる今年の強さ」ライバル履正社に“衝撃のコールド勝ち”、「190cm怪物」森陽樹の登場…現地記者が聞いた“西谷浩一、取材最後のひと言”<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

大阪大会を現地取材した記者が見た大阪桐蔭「気になる今年の強さ」とは

 機先を制したのは履正社だった。

 先頭の近沢賢虎が四球で出塁すると、すかさず盗塁を決めた。犠打で三進、3番・足立直緒己のセカンドゴロの間に1点を先制。ノーヒットで先制点をあげる。その後1点を加え、履正社の隙のない野球が発揮されたのだった。

 ところが、その裏、大阪桐蔭はそれまでの戦いとはまるで見違えるかのような姿を見せた。

 先頭の吉田翔輝が三遊間にゴロを転がすような左前安打で出塁、犠打で二進の後、3番の境亮陽は吉田に倣うように左前に転がすと、4番・徳丸快晴が左中間に落とす適時二塁打。さらに、内山彰梧の右前適時打、8番の増田湧太にも適時打が出て、この回一挙5点を挙げた。

 この日、大阪桐蔭が見せたのは単打を強く意識したバッティングだった。徳丸の適時打は二塁打だが、ボールが落ちたコースによるもの。それを含めて同イニングの5安打中4安打がシングルヒットであったことがその証左だ。2回にも4安打に四球を絡めて6点を奪ったが、全てシングルヒットだった。

 主砲の徳丸は話す。

「長打が出るのはベストなんですけど、単打、単打で少しずつプレッシャーを与えて一気に得点を取っていくのをやっていこうと言っていた。みんないい形でできて良かった。履正社には昨年の夏、負けていたのでみんなで束になっていけた」

 大阪桐蔭の打線は今年に限らずポテンシャルは高い。さらなる高みを目指していくべく日々取り組んでいる。大学や社会人、プロでの成功率も高く、上の舞台を見越して強く振ってきたが、低反発バットへの移行もあって、現チームは思うようなバッティングができていなかった。

 事実、今大会も序盤に先制しても追加点が奪えない試合が続いていた。しかし、この日は違った。長打を捨てることを意識して、単打集中の攻撃力で得点を重ねたのだった。

 1回に5点を奪っても、その手綱を緩めることはなかった。それは、履正社の戦い方も意識の中にあったからだ。

準決勝前日のミーティングで…

 履正社のような足を使って攻める攻撃は、接戦など僅少差の戦いになると効力を発揮する。しかし、得点差が生まれてしまうと持ち味は薄れる。3点以上のビハインドの中で盗塁を決めたところで、相手の脅威にはならないからである。走力を売りにするチームの欠点といえる。徳丸は言う。

「昨日のミーティングで、西谷先生から点数が開いたら相手の足を使った野球もできなくなるから取りに行こうと。先制点は取られたけど、大きく取り返せたのは良かったと思う」

 対して西谷監督の弁だ。

【次ページ】 怪物「森陽樹」が決勝先発…なぜ?

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