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《稲尾以来の大記録達成》今季打率.360! 打って良し投げて良しのカープ森下暢仁が高打率を残せる“進化”の理由 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byJIJI PRESS

posted2024/07/15 11:00

《稲尾以来の大記録達成》今季打率.360! 打って良し投げて良しのカープ森下暢仁が高打率を残せる“進化”の理由<Number Web> photograph by JIJI PRESS

打席での森下。今季25打数で二塁打1を含む9安打を放ち、打点1も記録している(7月14日時点)

 主戦となった3年時の18年春季リーグでは8試合で、3勝2敗、防御率3.00の投手成績とともに、打率.409の打撃成績を残した。大学最後の秋季リーグ戦では7試合登板で防御率1.00(2勝3敗)、打率.360をマーク。代打から2試合出場した。

 20年にカープに入団すると、当初から打撃センスの高さを感じさせていた。2年目にはセ・リーグ投手最多タイの10犠打を記録し、23年にはプロ初本塁打を放った。それでも、プロの投手のレベルは高く、昨季までシーズン最高打率は22年の.190だった。だが、打撃感覚は勝利への渇望とともに研ぎ澄まされる。昨季は6月3日のソフトバンク戦から、森下は安打を記録した9試合すべてで勝ち投手となって、チームを勝利に導いている。

「ピッチングが良かったら、打ちたいなと思って打席に入っている。“9番目の打者”とかは考えず、普通に。投手は毎日試合に出られるわけではないので、その1試合で自分の人生が変わる。1週間に1回、そこで結果を出さないといけない。そういうことだけ考えています」

 昨オフの契約更改時、米大リーグ移籍への思いをあらためて口にした。海を渡るためにも、まずはチームで認められる存在に──。広島球団はこれまで、そうやって選手を送り出してきた。

 以前、森下に「エースになるために必要なもの」を尋ねると、即答だった。

「結果です」

 今季は12試合で6勝3敗、防御率1.62。11試合でクオリティースタートを記録する。一昨年の右肘クリーニング手術の影響が払拭され、直球の切れが増した。さらに握りを分けた2つのチェンジアップを使い分け、カットボールと対となる球種ツーシームも右打者にはやっかいな存在になっている。

高打率を引き出した投手としての進化

 森下が先発した全12試合でバッテリーを組む會澤翼は、投球面以外の変化も感じている。

「もともと強い、負けず嫌い。今年は(チームを)背負って投げているなと感じる。ベンチの中でも声を出しているし、そういう姿を野手も見ている。本当に成長しているなと感じます」

 前田健太(デトロイト・タイガース)や大瀬良大地といったエースたちとバッテリーを組んできた女房役もその成長を認めている。打力が注目される今季だが、根底にあるのは投手としての進化だ。

「プロは役割がはっきり分かれているので、それをまっとうしないといけない」

 チームの勝利のために投げ、打席に立つ。それは投手でも野手でもなく、野球人としての本能。プロ5年目の今も、森下はそこだけを追求している。

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