前田　俺は試合直後、「こんなことやらせたのは猪木さんじゃないか」と思ったんだよね。それで、あの日の体育館はシャワー室が新日本側の控室の中にあったんで、怒鳴り込んでやろうと思って入っていったんだよ。そしたら猪木さんと目があったんで、文句言おうと思った瞬間、「あれでいいんだよ」って言うから、「あれっ、猪木さんじゃないのか？」って（笑）。

藤原　猪木さんもああいう試合が好きだから、わからねえよな。

前田　それでパッと横を見たら坂口さんがしかめっ面して、目も合わさなかったんで、「あっ、坂口征二が犯人か」と思ってね（笑）。

藤原　おい、決めつけるなよ（笑）。

試合後、リングサイドに現れた猪木に言葉をかける前田　©東京スポーツ新聞社

伝説のセメントマッチはだれが生み出したのか？

――でも、それは疑心暗鬼になりますよね。しかも、今の今まで真相は藪の中で。

前田　坂口さんと高橋さんの合作か、それとも高橋さんひとりでけしかけたことか。最近になって高橋さんの線も強いなと思い始めたんだけど。

――高橋さんはそれぐらい外国人レスラーと近い関係だったということですか？

前田　というよりも暇なんだよ。

――そういうことですか（笑）。

前田　巡業が続くと退屈するから、そういうことをして遊んでるだよ。そして昭和のプロレス界って、いまよりもっと“野生”だから、長い時間一緒に行動していればいろんなことも起こる。ケンカみたいな試合だって、普通にあったしね。

藤原　いまは時代が違うからな。今なんか道場で「コラッ、気合いいれろ！」って言ったらパワハラだって言われるんだよ。ガーンとぶん殴ったりしたら暴力だしな。

前田　傷害事件にされますよ。

藤原　俺らの時は殴られるのなんて当たり前だったよ。手で殴るんじゃなくて、硬いプッシュアップバーでガーンって殴られて、「ありがとうございました！」って言ってるんだから。でも、いまそんなことやったら問題だもんな。プロレスラーはぶん殴ったり、蹴ったり、絞めたりするのが仕事なんだけどな。

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