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「可愛いのかと思ったら鬼やんけ」出会いから9年の決着…安納サオリを破った岩田美香のプライドの理由「スターダムはどんどん大きくなって…」
posted2024/06/30 11:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダムの王者である安納サオリは、4度目の防衛戦の相手に他団体の選手を指名した。センダイガールズ(仙女)の岩田美香である。
2020年から今年3月までフリーとして活動してきた安納(現在はスターダムと契約)らしい選択だった。「これは私のわがままです」とも。
これまでスターダムを代表する選手たちがワンダー王座を手にしてきた。現在も、団体内に挑戦を希望する選手がたくさんいる。そうした選手たちを差し置いて、他団体から挑戦者を選んだのだ。相当な決意があってのことだろう。
「決着をつけたい。フリーとしてやってきた時期の伏線を回収したいという気持ちもあります」
6月22日、国立代々木競技場第二体育館での防衛戦が決まると、安納はそう語った。彼女の物語は、昨年春にフリーとしてスターダムに参戦する前からずっとつながっている。業界最大の女子プロレス団体スターダムで輝く選手たちと距離を置き、しかし試合結果やコメントは逐一チェックして「いつか自分もスターダムでさらに輝くんだ」という気持ちを溜め込んでいた。スターダムに出ていない状態は“伏線”なのだと。
親友であり最大のライバルでもあるなつぽいとの対戦、白いベルト奪取など、まさに伏線回収だった。スターダムでしかできないことを実現し続けたのだ。そして今回、安納は他団体からの伏線を持ち込んだ。
最初の印象「どんだけ可愛いのかと思ったら鬼やんけ!」
いや、そもそものスタートはといえばスターダムだ。アクトレスガールズの新人時代、スターダムで修業していた安納は、同年デビューの岩田が宝城カイリと対戦するのをセコンドとして見た。
「9年前の後楽園ホールでしたね。岩田は見た目もよくて“美仙女”なんて呼ばれてた時期もあるくらい。でもカイリさんとの試合では鼻血ダラダラ流しながら鬼のような目をして闘ってました。“どんだけ可愛いのかと思ったら鬼やんけ!”って(苦笑)」
女優など芸能界から人材をスカウトしていたアクトレスガールズに対し、仙女は長与千種の弟子・里村明衣子が設立した“本格派”団体。縁遠い存在だと思っていた安納だが、フリーになると仙女参戦の機会を得る。岩田との初シングル対決は2022年の11月。時間切れ引き分けに終わったバックステージで、両者はともに「悔しい」とコメントしている。意地を張り合わずにはいられない、そんな関係に見えた。
「言葉ではうまく説明できないです。ただ燃える相手なのは間違いなくて」(安納)