前田　思い返してみると、試合前からいろいろあったんだよ。東スポかどっかの記者が「アンドレが『マエダを殺す』って言ってたけど、大丈夫？」って聞いてきたんで、「もう、プロレスの記者を何年やってるんですか。『殺す』って言って誰も殺さないでしょ。『血の海にしてやる！』って言って血の海にならないでしょ」って言ったんだよ。そしたら今度は高橋さんが来て、「アンドレがお前のことを生意気だからどうのこうの言ってるんだ。俺は『そんなことない』って言ったんだけど、『挨拶にも来ないじゃないか』って言うから、挨拶に行ってくれよ」って言われたんだよね。

　それで高橋さんに連れられて外国人控室に入ったら、マードックたちがポーカーやってて、パッと俺の顔を見るなり、「ああ、コイツかわいそうだな」って顔をしてるんだよね。それでアンドレのほうに俺が近づいて行ったら、「ゲラウェイ！」って言われてさ。それで俺は、また高橋さんがイタズラでやってるんだろうなと思って控室に戻ったんだよ。

――外国人レスラーみんながグルになってのドッキリだろう、と。

前田　そしたら高橋さんがまたやってきて、「前田、悪いけど今日は俺がレフェリーできないんだよ。だからちょっと気をつけてな。なにが起こるかわからないから」って言うんだよね。

アンドレの強引なフルネルソンに前田は苦悶の表情　©東京スポーツ新聞社

試合後の前田にアントニオ猪木がかけた言葉

――たしかにあの試合のレフェリーは、ミスター高橋さんじゃなく、アンドレが連れてきたフレンチ・バーナードでした。

前田　でも、俺は本気にしないで、「またまた～。どこまでやるんだ、このオッサンは」と思ってリングに上がったんだよね。それで最初は普通にプロレスをやろうと思ったんだけど、アンドレが全然応じてこなくてさ。「あれっ？ これはプロレスにならないな。でもテレビ放送だし、なんとかやらなきゃいけない」と思ってたら、体重かけられてグシャッとされて。「これはヤバいな」と思って星野さんに聞いたら「俺に聞くな」って言われたんで。「もうやるしかない。もし怒られたら全部藤原さんのせいにしちゃおう」と思ってやったんだよね（笑）。

藤原　いいんだよ、それで。あのままだったら危なかったぞ。

――ホント危ないですよね。

前田　危なかったよ。

前田日明と藤原喜明　©タイコウクニヨシ

藤原　それで次のシリーズ（第4回IWGP）で俺がアンドレとやったんだよ。そしたら、まあ優しくやってくれたよ（笑）。

前田　俺は何があってもいいようにコーナーで控えてたんですよ。アンドレに「行くからな」ってメンチを切って。でも、何にもなかったね。

――アンドレ戦のあと、猪木さんと話す機会はなかったんですか？

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