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「期待はずれレイカーズ」コーチ陣を全員解任、八村塁にもトレードの噂が……“名門の宿命”を痛感した八村がNBA5年目で到達した境地とは?
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2024/05/12 06:00
NBA5シーズン目を終えた八村塁(26歳)。4年ぶり18度目の優勝をレイカーズだったが、プレーオフ1回戦敗退となった
成長はプレーだけではない。NBAで戦うメンタルもアップグレードしていった。
たとえば、以前は口癖のように、「僕は何でもできるから」と言うことが多かったのだが、今シーズンは、「きょうはディフェンスがよくなかった」などと、反省点を素直に口に出すことが増えていた。チームとして、1人のNBA選手として高みを目指すためには、できなかったことを認め、反省し、次はもう少しうまくやろうとすることが大事だ。レブロンやデイビスら、トッププレイヤーを間近で見て学んだことのひとつだ。
シーズンの最後にはまた大きな壁にぶつかった。プレイオフ1回戦でナゲッツから徹底的にスカウティングされ、自分らしいオフェンスができず、得点で貢献できない試合が続いたのだ。オフェンスがうまくいかない分、ディフェンスで何とかチームに貢献しようとしたが、ディフェンディング・チャンピオンのナゲッツを相手に苦戦することのほうが多かった。その対策として何を意識しているかと聞くと、八村は「チームとしてなおすことが大事」と答えた。
自分の力を証明するためにどうするかではなく、チームが勝つためにどうしたらいいのか。その中で自分は何をすればいいのか──。NBAのローテーションプレイヤーとしての立場を確立し、優勝を目標に掲げるチームでたどりついた結論だった。
「変化のない安定した環境はない」
シーズン後、個人としてさらにレベルアップするためにどうしたらいいかと聞かれたときも、八村はチーム第一の考えを口にした。
「どこのチームに行こうが、システムっていうのが大事だなっていうのもわかってきた。システムに合った自分の強み、弱みをわかって、そこを集中的に練習するべきじゃないかなと思いました。スーパースターとかオールスターになろうといろんなことを練習するよりも、チームのためになる、そういう練習をしていったほうがいいなというのは感じます」
NBAという最高峰の世界で、頂点を目指しながらも変化のない安定した環境というのはほとんどないのかもしれない。それなら、その中で自分はどんな選手でありたいのか。それを考え抜き、トンネルの先に灯りが見えたような、そんなNBA5シーズン目だった。