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“実績なしの3年生”は、なぜ箱根駅伝で「衝撃の区間新記録」を叩き出せたのか? 東海大逆転Vの立役者が語る「黄金世代を追いかけた」3年間
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2024/05/18 06:00
2019年の箱根駅伝で初の大学駅伝デビューとなった小松陽平。8区で区間新の走りを見せ、首位・東洋大をとらえ、東海大逆転優勝の立役者となった
「俺、ヒーローじゃん」
そう思うとうれしさがこみ上げてきた。
途中、両角監督から檄が飛んだ。
「おまえの姿が全国に映っている。そのカメラを見て、行け!」
襷を外すのを忘れていた(笑)
札幌では、恩師の大井貴博先生(東海大札幌高)らが応援してくれていた。小松の能力を高く評価してくれたのは、大井先生で「小松は大学での伸びしろを潰さないためにもあえて練習量を増やさなかった。黄金世代にはいい選手がたくさんいるが、小松が一番の伸びしろがある。必ず、みんなに追いつけるはずだ」と送り出してくれた。その期待に応える走りを見せることができた。
「ラストは、もうほんとに苦しかった。そのせいか、戸塚の中継所に入る前まで襷を外すのを忘れていたんです。監督の『襷を外せ!!』という声で外したんですが、恥をかくところで、危なかった(苦笑)」
最高に楽しい8区でした
9区の湊谷春紀に襷を託し、チームメイトに抱えられて待機場所に向かっている途中、箱根駅伝の運営スタッフから「区間新です」と言われた。「嘘だろ」と思ったが、22年ぶりの快挙だった。
「自分が生まれた97年に古田(哲弘・山梨学院大)さんが作った記録を破ることができた。しかもトップで襷を渡せた。疲れたけど、最高に楽しい8区でした」
大手町では、うろ覚えの校歌をチームメイトと肩を組んで歌い、トップフィニッシュした郡司と抱き合って喜んだ。優勝の味を噛みしめ、大会MVPの金栗四三杯を獲得した。
小松は、陸上人生で最高の瞬間を迎えた。その後、4年生となった小松に待ち受けていたのは思わぬ“壁”だった。
<つづく>