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「長谷部誠の引退会見…記者がハンカチで目を」ドイツ人記者と仲間に愛された40歳は“未来の名将”「プロの鑑」「シャビ・アロンソと同様だ」
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フィリップ・セルドーフ/南ドイツ新聞Philipp Selldorf / Süddeutsche Zeitung
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/04/29 17:01
2011-12シーズン、ボルフスブルク時代の長谷部誠。17シーズンものキャリアをブンデスで積み重ねたレジェンドには、ドイツ人も称賛を惜しまない
「マコトは完璧なロールモデルだ。チームメイトに安心感を与える存在で、多くの若い選手たちから慕われている」(フランクフルトのGKケヴィン・トラップ)
「彼はトップ中のトッププロフェッショナルだ。そんな選手を指導することができて、本当に幸運だったよ」(元フランクフルト、現モナコのアディ・ヒュッター監督)
「マコトはプロの鑑だ。たくさんの選手にとって、模範的な存在だった」(フランクフルトのチーフ・スポーツ・オフィサーのクレーシュ)
こんな風に、長谷部と共に仕事をした人は、誰もが口を揃えるのだ。そのセカンドキャリアも、楽しみでならない。
新時代の名将シャビ・アロンソとも共通項が
今シーズン、ブンデスリーガでは12年ぶりに王者が代わった。バイヤー・レバークーゼンが、バイエルン・ミュンヘンの12連覇を阻み、クラブ史上初のリーグ優勝を飾ったのだ。彼らを指揮したのは、シニアレベルの監督として2年目の元スペイン代表MFシャビ・アロンソ──長谷部の2歳上の気鋭の指導者だ。
この二人にも、共通項が見出せる。どちらも現役時代のメインポジションはセントラルMFで、戦略的な目とリーダーシップを持ち、フットボールを深く理解している(ともに代表出場試合数が114を数えるのは偶然だろう)。プロの選手はごまんといるが、これらを備えている人はあまりいない。
そして長谷部も、アロンソと同様に、事を急いたりしない。
前者は「ゆっくりと次のステップを進めていきたい」と言い、後者は現役引退後に出身地サンセバスティアンで古巣レアル・ソシエダのBチームを率い、その間に来たオファーはすべて断っていた。そして今季、レバークーゼンで空前絶後の大成功を収めると、リバプールやバイエルンといったビッグクラブからの誘いを断り、少なくともあと1シーズンはレバークーゼンで続けると宣言している。
いつの日か、この2人の偉大なフットボーラーが、指揮官として対戦する日は来るだろうか。それを想像すると、現役選手としての長谷部と別れる切なさも、少しは和らいでくる。