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じつはテニスで国体優勝、杉村太蔵が振り返る伝説の学生時代「史上最年少で北海道王者に」「名門・柳川からのスカウトを辞退」
text by
堀尾大悟Daigo Horio
photograph byYuki Suenaga
posted2024/04/13 11:00
コメンテーターとしてテレビで見る機会が多い杉村太蔵。じつは国体優勝の実力を持つ「テニス選手」としての話を聞いた
「スウェーデンを見てみろ。ボルグ、ヴィランデル、エドバーグ。雪国でもあれだけのスタープレーヤーを輩出できるんだ。藻岩の目指すテニスは『スウェーデンテニス』なんだよ」
緒方のいう「スウェーデンテニス」の意味するところは2つある。1つは、型にはめずに個性を大切にすること。ビヨン・ボルグ、マッツ・ヴィランデル、ステファン・エドバーグは、いずれもまったく異なるプレースタイルで1970~90年代に一時代を築いた。
雪国の北海道でも絶対に日本一になれる
もう1つは、短い練習時間の密度を最大限に高めること。例えば30分しかコートで練習できない日でも、その前に1時間をかけて徹底的にトレーニングする。クタクタな状況でラケットを握り、コートに立つと、たとえ短い時間でも試合中の極限状態を再現した内容の濃い練習ができるのだ。
「だから、オレは雪国の北海道でも絶対に日本一になれる。そう思っているんだ」
この緒方の一言と勝利への執念は、17歳の杉村少年に大きな衝撃を与えた。
日本一が確信に変わった
「それまでは、明確な根拠もなくただ日本一、日本一とだけ口にしていたのですが、緒方先生の一言で絶対に日本一になれる、という確信に変わりましたね。練習への取り組み方も大きく変わりました」
高校2年時にはインターハイのシングルスでベスト16、ダブルスではベスト8に進出。さらに団体ではベスト4に入り、全国区でも「札幌藻岩の杉村太蔵」の名は広く知れわたっていく。「日本一」の山頂を、杉村の目ははっきりととらえていた。
<つづく>