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じつはテニスで国体優勝、杉村太蔵が振り返る伝説の学生時代「史上最年少で北海道王者に」「名門・柳川からのスカウトを辞退」
text by
堀尾大悟Daigo Horio
photograph byYuki Suenaga
posted2024/04/13 11:00
コメンテーターとしてテレビで見る機会が多い杉村太蔵。じつは国体優勝の実力を持つ「テニス選手」としての話を聞いた
「杉村君。柳川に来なさい」
僕のテニス人生で最も輝かしい瞬間の一つ(笑)
あの柳川の監督からの直々のスカウト。ジュニア選手としてはこれ以上の栄誉はないだろう。しかし、15歳の杉村少年は、坂本の目をまっすぐ見て言った。
「ありがとうございます。でも、柳川で日本一になるのは当たり前です。地元の北海道で練習を積んで、柳川を倒して日本一になるのが僕の夢なんです」
失礼な言い方だが、この時点で優勝や準優勝でなくベスト16止まりの選手が、天下の柳川の監督にそう言い放つのはなかなかできることではない。当時から杉村の「大物ぶり」をうかがわせるエピソードだ。坂本はニッコリと微笑み、「そうか、わかった。対戦するのを楽しみに待っているぞ」と杉村少年にエールを送ったという。
「でも、坂本監督からスカウトされたこと自体は、それはもう嬉しかったですよ。僕のテニス人生で最も輝かしい瞬間の一つです(笑)」
史上最年少で北海道大会を制覇
「地元の北海道から日本一に」との宣言どおり、杉村は北海道の名門、札幌市立札幌藻岩高校に進学する。
高校生になったばかりの杉村は、いきなり大きな結果を出す。毎トーの北海道予選に当たる「北海道毎日テニス選手権大会」で優勝を果たすのだ。しかもジュニアの部ではない。一般部門で、だ。
15歳7カ月の杉村は、道内の実業団の名だたる選手をあれよあれよと撃破し、頂点に立ったのだ。この最年少優勝記録はいまだに破られていない。
「いわゆるノンプレッシャー状態でしたね。誰も勝つと思っていないし、自分も勝とうと思っていないから、ひたすらボールを引っぱたいて、それがことごとく決まったんです」
これも持って生まれた強運なのか。いずれにしても大きなタイトルを手にした杉村は、道内の有望ジュニア選手が集まる札幌藻岩高校でも1年生からレギュラーの座をつかむ。
神童扱いも本人は「日本一」しか見えていなかった
1年生の雑用係も免除されていたというから、さぞ天狗になっていたのでは……? と、杉村のパブリックイメージも相まって、つい邪推してしまう。ところが、それを本人は真っ向から否定する。