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世界1位のまま25歳で突如引退、全盛期の世界女王はなぜテニス界を去った?「記者会見に赤ちゃん同伴」“天才少女”アシュリー・バーティの今
posted2024/04/12 17:03
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
テニスにコンピュータ・ランキングが導入された1973年以降、現役の世界ナンバーワンが突如引退した例はふたつしかない。1例目は2008年5月、当時25歳だったベルギーのジュスティーヌ・エナン。4連覇がかかった全仏オープンの直前だった。
そしてそのエナンでさえ驚いたのが2022年3月のアシュリー・バーティの電撃引退だ。年齢は同じ25歳だったが、全豪オープンで44年ぶりの自国チャンピオンという華々しい称号を得てからわずか2カ月足らずというタイミング。23歳だった2019年の全仏オープンでグランドスラム初優勝を果たし、2年後のウィンブルドンを制した翌年の出来事である。ジュニアの頃から天才と謳われたバーティの時代がいよいよ到来か――そんな予感を抱かせた矢先だった。なぜ今なのかという問いにバーティはこう答えている。
今キャリアを終えることは完璧な幕引き
「ウィンブルドンの優勝で子供の頃からの一番大きな夢が叶ったことで、引退を考え始めるようになった。その上、自分の国のグランドスラムで最高のファンたちに見守られながら優勝できて、この幸せの中で今キャリアを終えることは完璧な幕引きだと思った」
キャリアの先には、オープン化以降の女子では7人しか達成していない生涯グランドスラム達成の可能性もあった。語り継がれるレジェンドたちにもっと近づけるはずだった。しかし、バーティのそれまでの歩みを知る人たちは、その引退劇に「バーティらしさ」をぼんやりと見ていたに違いない。