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じつはテニスで国体優勝、杉村太蔵が振り返る伝説の学生時代「史上最年少で北海道王者に」「名門・柳川からのスカウトを辞退」
posted2024/04/13 11:00
text by
堀尾大悟Daigo Horio
photograph by
Yuki Suenaga
2023年、25年ぶりに公式戦に復帰
3月下旬、都内のとあるテニスクラブ。平日の昼下がり、60~70代のテニス愛好家の男女が思い思いのウェアに身を包み、ゆったりとボールを打ち合っている。
そのほのぼのした雰囲気とは真逆の激しい打球音が、奥のコートから聞こえてくる。そのコートに杉村太蔵の姿があった。
2023年、毎日新聞社が主催するテニストーナメント「毎日テニス選手権(通称:毎トー)」で、高校生以来25年ぶりに公式大会に出場した杉村。今年も、7月に行われる同大会に向け週1回のペースで練習を続けている。
本気でテニスの練習をする杉村
この日、杉村が取り組んでいたのはシングルスの実戦を想定した練習だ。バックハンドをストレートに打ち、コーチがボレーをクロス方向に短く返球したところを、前に詰めてフォアハンドを叩き込む。コートを左右に、前後に動き回る、40代の体にはハードな“ガチ練”を、杉村は汗を流しながら黙々とこなしていた。
「あーもう、ヘタクソ!」
ボールをネットに引っかけて思わず出た叫び声が、雲一つない青空に響きわたる。
カゴのボールが空になり、しばしの休憩に入ったタイミングで、汗をタオルで拭っている杉村に声をかけてみた。
「すごくハードな練習をしていますね。体力はすぐに戻るものですか?」
「いやぁ、復帰したばかりのときは全然ダメでしたよ。なにせ25年も試合から離れていましたから、試合のカンを戻すのも大変でしたね」
次に何を聞こうか考えていると、杉村のほうから機先を制すように口を開いた。
「……もう、いいですか? 取材の機会はまた設けるので」
そう言うと、休憩もそこそこに再びコートに駆け戻っていった。
テレビで明るく振る舞い、共演者からイジられる「薄口政治評論家」のイメージとは明らかに異なる、真剣にテニスに向き合っている杉村太蔵の姿が、そこにはあった。